第67章 お前が?

それは手術用メスだった!

秦野伸年は即座に身を翻し、藤原千華の手を必死に押さえつけた。

血が噴き出し、それが自分のものなのか藤原千華のものなのかわからなかった。

「離して!離してよ!」藤原千華は叫んだ。

藤原修が前に出て、秦野伸年と藤原千華を引き離し、メスを取り上げた。

今回は秦野伸年が怪我をしたが、幸い血は多く出たものの、傷は深くなかった。

「藤原千華、こんなことをしてはいけない!」藤原修は抑えた声で、姉とは呼ばず、彼女の名前を直接呼んだ。

藤原千華は大声で泣き出した。「私はもう廃人よ、生きていても意味がないわ!」

彼女はいつも明るく、この数日も平静を保とうと努力していた。

しかし、崩壊は十分な失望が積み重なった後、一瞬にして起こるものだ。

藤原修と秦野伸年は彼女の傍らで守り、互いに沈黙を保った。