第84章 藤原修と相性がいい

しかし、彼は結局何もせず、ただそのように静かに鑑賞し、大切にしていた。

……

時枝秋は翌朝目覚めると、木村裕貴から送られてきたLINEを見て、「たまたま見かけただけよ」と返信した。

木村裕貴が信じるはずがない。

彼はネット中を探し回ったが、どこにも資料は見つからなかった。

博物雑誌というのは特定の個人ではなく、複数の専門家チームで構成されているからこそ、権威ある解説ができるのだ。

たまたま見かけた?時枝秋はいったいどこでたまたま見かけたというのか?

しかし、木村裕貴は口角を上げた。この仕事に、今から興味が湧いてきたのだ!

時枝秋は短髪に変え、赤司錦の姿に扮して、今日は藤原千華の傷の回復具合を診に病院へ行く日だった。

彼女はすぐに出かけ、病院へ直行した。

藤原千華は看護師と楽しそうに会話しながら、目は病室のドアの方を絶えず見やっていた。「赤司先生はまだ来ないのかしら?」

「私にもわかりません。彼女は当院の医師ではありませんので」看護師は首を振った。

藤原千華はそのことを知っていた。

しかし、それは赤司先生への信頼に影響しなかった。この二日間、桐生先生とリチャードが毎日交代で何度も彼女の様子を見に来ては、傷口から何か手がかりを見つけようとし、ついでに赤司先生のことを探ろうとしていた。

もちろん、藤原千華は彼らを全員追い返した。

赤司先生のことを話したくないわけではなく、ただ彼女も...この赤司先生が一体どういう人物なのかまだわからないのだ!

しばらくして、ドアの外から軽やかな足音が聞こえてきた。

藤原千華は急に元気になり、「赤司先生でしょうか?」

時枝秋は声を聞いて、ノックもせずにドアを開けた。「藤原お嬢様、今日は傷の具合を診させていただきに参りました」

「はい」藤原千華の声は先日のような活気と高揚感を取り戻しており、回復具合が良好なことが一目で分かった。

しかし、時枝秋は念のため、彼女の手を取って細かく観察した。

藤原千華も彼女の様子を観察していた。目の前の少女は医療用マスクをしているものの、露出している眉は繊細で清潔感があり、瞳は澄んで生き生きとしていた。切れ長の杏眼は少し上がり気味で、可愛らしさの中に凛とした雰囲気を漂わせ、端正な印象を与えていた。