第85章 彼女には相応しくない!

「二十五歳です」時枝秋は意図的に年齢を5歳上げて答えた。彼女に不思議がられないようにするためだ。

藤原千華は即座に笑顔を見せた。これはちょうど良いじゃないか?藤原修よりちょっと若いくらいで。

彼女は突然うっとりと笑い、時枝秋は眉をひそめ、彼女が何を考えているのか分からなかった。

「彼氏はいるの?よかったら、私が紹介してあげようか?」

時枝秋はコーヒーを飲んでいて危うくむせそうになった。確かに藤原千華が自分をずっと見ていることには気付いていたが、まさかこんな考えを持っているとは思わなかった。

「もういます。藤原お嬢様、結構です」

藤原千華は即座に落胆したが、その思いはまだ諦めきれていないようで、こう言った。「これからは遠慮しないで、お姉さんって呼んでくれていいわよ。彼氏がいても構わないわ。私には弟がいるの。ちょっと気難しいところはあるけど、とても正直な人よ。あなたとも相性がぴったりだと思うの。今度紹介させてもらえないかしら。友達として知り合うだけでもいいから」

時枝秋は目尻が引きつった。藤原千華は自分のことをそんなに嫌っているのか?誰かれ構わず藤原修から自分を引き離そうとする人を紹介してくるなんて。

藤原千華は彼女の表情を見て、慌てて言った。「錦ちゃん、そういう意味じゃないのよ。私、弟に今まで一度も彼女を紹介したことがないの。ただ、あなたが弟にぴったりだと思って、人柄も良いし、だからこういう考えが浮かんだだけなの」

なるほど、呼び方も赤司先生から錦ちゃんに変わったか。

「お兄様には...もう彼女がいるんじゃないですか?」時枝秋は注意を促した。

「はぁ!」時枝秋の話題が出ると、藤原千華の表情は一気に曇った。「あの子なんかふさわしくないわ!」

時枝秋は目を伏せ、何も知らないふりをした。

藤原千華は彼女の誤解を恐れ、説明した。「あの子は、私の弟のことを全然好きじゃないの。毎日離れたいって騒いでるし、それに、外で他の男性も用意してるのよ。だから、彼らの別れは時間の問題なの」

藤原千華は知らず知らずのうちに自分がおしゃべりな噂好きになっていることに気付き、少し恥ずかしくなって急いで口を閉じた。

時枝秋は薬の使い方と養生の方法について再度説明し、そして辞去した。