しかし、これらの気質は時枝秋を見た時に全て消え去り、彼の表情には珍しく柔らかさが宿った。
時枝秋は思わず彼を見つめ直した。美しいものを愛でる心は誰にでもあるもので、藤原修のような目を楽しませる容姿は、時枝秋でさえも拒めなかった。
「藤原修、お姉さんはいつもあなたに彼女を紹介しているの?」時枝秋はすぐに尋ねた。
「紹介されたことはない」藤原修は眉をひそめた。「彼女が何か言ったのか?」
「何も言ってないわ。ただ、あなたがあまりにも綺麗だから……きっと誰かがあなたに彼女を紹介したがるんじゃないかなって。」
藤原修は瞳を凝らし、低い声で言った。「藤原夫人は私たちが既に結婚していることを忘れたのか?」
時枝秋は思わず笑みを漏らした。
そうだ、彼女と藤原修は既に結婚しているのだ。他人が彼女を紹介できるわけがない。
他人の前では、生まれ変わってから、少し冷たく距離を置くようになっていた。
藤原修の前でだけ、彼女は生き生きとして、活発で、笑顔も自然に溢れ、表情も豊かで、声音も甘く愛らしかった。
藤原修の整った眉が寄るのを見て、時枝秋は彼にぎゅっと抱きついた。「忘れるわけないじゃない。私たちは合法的な夫婦よ。もう第三者の入る余地なんてないわ。」
安心した藤原修は、自分の女の子を見つめ、顔にさらに優しい色が浮かんだ。
彼の身に纏う雰囲気は分かりやすく、時枝秋は彼がもう怒っていないことを知り、尋ねた。「私たち、どこに行くの?」
「家だ」低く澄んだ声に、かすかな電流が混ざり、耳に入ると特に心をくすぐった。
時枝秋は彼にしがみつき、静かに座った。
車が少し走ってから、これが浅湾別荘への道ではないことに気付いた。
「藤原修、私たちどこに行くの?まさか私を売り飛ばす気じゃないでしょうね?」時枝秋は車窓の外を覗き込んだ。
藤原修は珍しく軽く笑った。
胸の響きと混ざった笑い声は、深みがあり穏やかで、さらに溢れんばかりの愛情を含んでいた。
車はある別荘の前で止まった。
時枝秋は車を降り、見上げると、この別荘は浅湾別荘と比べて、一目で敷地面積が広く、より豪華で贅沢に見えた。
「見てみよう」藤原修は彼女の手を取って一緒に中に入った。
目に入るものは全て極めて豪華な装飾で、クリスタルで飾られたシャンデリアには、なんと本物のダイヤモンドが使われていた!