「これらは全部あなたの手書き原稿なの?」木村雨音はすぐに尋ね、羨ましそうにその山を見つめた。
「そう」時枝秋は頷いた。「最近書いたものばかり。すぐに使えるものもあれば、まだ修正が必要なものもある」
木村雨音は羨ましそうにパラパラとめくった。「これらはステージで使うの?全部最近作ったの?」
「うん」
木村雨音は目を見開いた。
彼女は以前、時枝秋と一緒に作曲を学んでいたが、彼女は通常数ヶ月かけてようやく一曲の使える曲を作れるのに対し、時枝秋は...これほどたくさん作っていた。
彼女は数ページを指差して尋ねた。「この『当面使用しない』というマークは何?」
「ああ、それ?今は使わない原稿だよ」時枝秋は簡単に説明した。「後で使うために取っておくの」
「こんなにたくさん取っておくの?」木村雨音はめくればめくるほど胸が高鳴った。
「うん」時枝秋は淡々と応え、彼女に対して全く警戒心を見せない様子で、「ちょっとトイレ行ってくる」
「どうぞ」木村雨音は言い、時枝秋が去るのを見届けると、すぐにその資料の山を開いて、スマートフォンで撮影し始めた。
時枝秋は軽く唇を上げ、瞳の中の光を隠した。
以前は確かに木村雨音に多くの原稿を渡していたが、その多くは、木村雨音が彼女の部屋に来て、許可も得ずに勝手に持ち去ったものだった。
彼女は美名の下に、その原稿を持って行けば、時枝秋のためにプロデューサーを紹介できる、時枝秋の才能をより多くの人に見てもらえると言っていた。
実際はどうだったか?
木村雨音の努力の結果、外部の人々が目にしたのは全て彼女、木村雨音の「才能」だった!
木村裕貴にしても、夏目休にしても!
...
時枝秋が戻ってきた時には、木村雨音は既に全ての撮影を終え、自分のスマートフォンに隠していた。
二人はしばらくなんとなく話をしたが、時枝秋はもう気が乗らなかった。
彼女が先に帰ると言い出すと、木村雨音はすぐに「うん、じゃあ先に帰って。また今度ね」と言った。
時枝秋は微笑みを浮かべ、背を向けて去った。
彼女が去ると、木村雨音は待ちきれずに先ほど撮影した写真を一枚一枚選び出し、詳しく観察し始めた。
認めざるを得ないが、彼女がどれだけ時枝秋を愚かで頭が悪いと言おうとも、時枝秋の創作能力は否定できなかった。