横澤蕾は眉をひそめた。「どうしたの?」
小林凌は当然新しいアルバムを出すつもりだった。今『國民シンガーソングライター』の番組が人気絶頂で、番組の熱気に乗じて新アルバムを準備し、この勢いを借りて自分の地位をさらに固めようとしていた。
「私、いくつか曲があるんですけど、お兄さん使ってくれませんか?」と木村雨音は尋ねた。
横澤蕾は少し考えた。木村雨音の作曲能力はいつも悪くなかった。これも以前、小林凌が彼女と関係を深めようとした重要な理由の一つだった。
しかし、二人はその後話題性を利用する件で亀裂が生じていた。それなのに木村雨音はまだ小林凌のことを考えているのか?
横澤蕾が黙っているのを見て、木村雨音は言った。「もし使いたくないなら、他の人に提供します。ただ、本当にもったいないと思って、まずお兄さんに聞いてみただけです…」
「まずは見せてみて」と横澤蕾は言った。
小林凌は確かに曲が足りていなかった。
曲の制作は一朝一夕にはいかない。インスピレーションが必要で、何度も磨きをかける必要がある。
『國民シンガーソングライター』の多くの出場者がこれほど多くのオリジナル作品を出せるのも、長年の積み重ねがあってこそだ。
しかも小林凌は今スケジュールが特に詰まっていて、じっくり作曲する時間が全くなかった。
もし木村雨音が本当に優れた曲を持っているなら、使わせてもらうのも悪くない。
木村雨音はすぐに嬉しそうに言った。「今すぐ持ってきます」
すぐに、彼女は小林凌と横澤蕾に会った。
彼女は自分の手稿を差し出した——時枝秋から手書きで写し取った原稿だった。
小林凌は最初、少し気のない様子だったが、パラパラと見た後、すぐに驚きの表情を浮かべた。
そして徐々に姿勢を正した。
これらの曲は、本当に素晴らしかった。
木村雨音が以前彼に渡したものよりも、さらに素晴らしかった。
彼は楽譜に沿って少し口ずさんでみると、非常に耳に残る曲だと分かった。
一度歌うだけで全て覚えられそうだった。
彼のプロとしての感覚からすると、これらの曲は一旦リリースされれば、驚くほどの伝播力を持つだろう。
アーティストにとって最も重要なものは何か?
顔だと言う人もいれば、事務所のプロデュースだと言う人もいる。