以前約束された映画やドラマの撮影なんて、彼女の番が回ってくることはないのだ。
アルバムの制作なんて、子供の遊びに過ぎない。
彼女はやはり小林凌という大木にしがみつくしかないのだ。
小林凌は少し躊躇してから言った。「先に帰りなさい。後で連絡します。」
木村雨音は分かっていた。彼がまずこれらの曲の真偽性を確認し、盗作がないかどうかを調べなければならないことを。
そして番組スタッフとも相談しなければならない。
彼女には待つ余裕があった。
ステージに戻り、藤原修の視界に入れさえすれば。
何でも待てるのだ!
……
小林凌は曲を横澤蕾に渡した。「蕾さん、見てください。」
「すぐに全ての知的財産権データベースでこれらの曲の状況を確認します。」横澤蕾は言った。「もしこの五曲が使えるなら、あなたのアルバムは半分以上成功したも同然です!木村雨音に復活の機会を与えるのは簡単なことです。」
横澤蕾はすぐにこれらの曲を調べ始め、市場でこれらの曲の痕跡を見つけることはできなかった。
つまり、木村雨音のこれらの曲は、確かにオリジナルだということだ。
横澤蕾はこの取引は割に合うと感じた。自分は木村雨音の創作能力を過小評価していたのだ。以前彼女が作った二曲は偶然だと思っていたが、まさか彼女にこのような持続的な創作能力があるとは!
こんなことなら、以前もっと優しく接するべきだったのに!
……
時枝秋が木村雨音に仕掛けた地雷は、しばらくは爆発しないだろう。
彼女も急いではいなかった。気持ちを切り替えて、庭で植物を一株選び、慎重に鉢に植え替えた。
今日、葉山彩未は定戸市を離れて故郷に帰るため、時枝秋と一緒に食事をする約束をしていた。
短い数日の付き合いで、二人は年齢を超えた親友となり、何でも話せる仲になっていた。
時枝秋のこのミントの鉢植えは、彼女へのプレゼントだった。
夜、あるレストランで、葉山彩未と時枝秋は楽しく話し、ミントの鉢植えを受け取って非常に喜んだ。「ありがとう、ありがとう、石ちゃん!今回の復帰は本当に嬉しかったわ。」
彼女は時枝秋を抱きしめ、その頬に思い切り二回キスをした。