藤原修は彼女の鼻先に近づき、唇にキスをし、後頭部を手で押さえながら、テーブル越しに深いキスを交わした。
時枝秋の耳先が急に熱くなって赤くなったが、拒むことはなかった。
彼が自分への感情と献身を、命と血を代償にするほど惜しみなく注いでいることを知った後、時枝秋の藤原修への感情も、深く真摯なものへと変わっていた。
藤原修が離れるまで、彼女の目は霞んでいたが、やがて清明になり、理性が戻った。
彼女は瓶を藤原修の手に押し込んだ。
藤原修は冷たい感触に触れて、彼女が「嗅いでみて」と言ったのであって、「キスして」とは言っていなかったことに突然気づいた。
彼が勝手にその文字を思い込んでいたのだ。
気づいた彼は背筋をさらに伸ばし、やっと腕を上げて香りを嗅ごうとしたが、途中で間違った腕を上げていたことに気づき、慌てて別の腕に持ち替えた。
ようやくその淡い蘭の香りを嗅ぎ、藤原修は動揺から落ち着きを取り戻した。
時枝秋は横で唇を噛んで笑い、彼のすべての動作を目に収めていた。
前世で彼の傍にいた何年もの間、彼に関心を持たなかったため、外の世界で誰もが恐れる、高位に君臨する男が、彼女の前でこんなにも慌てふためく一面があることに全く気づかなかった。
彼女が見逃してきたものは、本当にたくさんあった。
「とてもいい香りだ」藤原修は時枝秋の唇を見つめながら言った。この美容液は、香り高くても甘ったるくなく、清々しく上品な香りで、心地よく安らぎを感じさせた。
時枝秋の香りだった。
「あなたが使って。大切にしすぎないで。これからも定期的に作るから」時枝秋は優しく言い添えた。
藤原修は掌の中の小さな瓶を大切そうに握りしめた。
……
木村裕貴が時枝秋との協力を本気で決めてからは、彼女の仕事に熱心になり始めた。
時枝秋が次のラウンドの試合に向けて準備している時、彼は彼女の前に来て、一つの契約書を置いた。「時枝さん、広告撮影の話が決まりました」
選手全員が素顔を見せていないにもかかわらず、広告主たちはすでに動き出し、人気の高い選手たちに手を伸ばし始めていた。
マスクをつけたままの広告撮影でも構わないと彼らは考えていた。この波の熱気とファンを獲得できれば十分だった。
それに、選手たちがデビューした後にも、再び協力できる。