第103章 惜しまないで

藤原修は彼女の鼻先に近づき、唇にキスをし、後頭部を手で押さえながら、テーブル越しに深いキスを交わした。

時枝秋の耳先が急に熱くなって赤くなったが、拒むことはなかった。

彼が自分への感情と献身を、命と血を代償にするほど惜しみなく注いでいることを知った後、時枝秋の藤原修への感情も、深く真摯なものへと変わっていた。

藤原修が離れるまで、彼女の目は霞んでいたが、やがて清明になり、理性が戻った。

彼女は瓶を藤原修の手に押し込んだ。

藤原修は冷たい感触に触れて、彼女が「嗅いでみて」と言ったのであって、「キスして」とは言っていなかったことに突然気づいた。

彼が勝手にその文字を思い込んでいたのだ。

気づいた彼は背筋をさらに伸ばし、やっと腕を上げて香りを嗅ごうとしたが、途中で間違った腕を上げていたことに気づき、慌てて別の腕に持ち替えた。