彼女の瞳の中で、木村雨音の悪質な行為が露わになり、卑劣で恥知らずな姿がより一層鮮明になっていった。
木村雨音は胸が激しく上下し、口を開こうとしたが、一言も発することができなかった!
彼女にはただ、時枝秋が自分を陥れたということだけがわかっていた!
時枝秋は最初から自分を陥れる準備をしていたのだ!
なのに自分はその罠に見事にはまってしまった!
弁護士が話し終えると、夏目休は一秒も長居する気がなく、足早に立ち去った。
木村雨音の前を通り過ぎる時、彼は足を止めた。
「お前か?」夏目休は疑問形で尋ねたが、その口調は異常なほど確信に満ちていた。
彼は小林凌とはあまり接点がなかったが、木村雨音のことは気に入っていて、自分のスタジオで何度か会っていた。
彼女には十分な時間と機会があり、彼の曲を盗むことができた。
木村雨音は認めることを拒否した:「違います、夏目先輩、私は本当にそんなことしていません…」
彼女のものは全て時枝秋から手に入れたものなのに!
今回、夏目休は木村雨音を一瞬も見ようとしなかった。以前彼女に対してどれほどの好意と感動を抱いていたかと同じくらい、今は嫌悪感を抱いていた。
彼は彼女の窃盗行為を憎むだけでなく、自分の目が節穴だったことも憎んでいた。
突然、ある人影に目を引かれた。
彼は目をやると、清らかな眼差しで群衆の外にいる時枝秋が、練習室の本棚に斜めにもたれかかり、遠慮なくこちらを見つめているのが目に入った。
夏目休は突然、まるで自分が全世界を見逃してしまったかのような錯覚を覚えた。
彼は時枝秋を深く見つめてから、その場を去った。
木村雨音が追いかけようとしたが、夏目休はすでに弁護士チームとマネージャーの保護のもと、姿を消していた。
横澤蕾は木村雨音の頬を平手打ちし、その強さで彼女をその場に倒れ込ませた。
木村雨音は腫れ上がった頬を押さえながら、恨めしそうに横澤蕾を見つめた。
横澤蕾は怒りに任せてもう一発平手打ちを加え、彼女の両頬を対称的に腫れ上がらせた。
小林凌が立ち去ると、横澤蕾と時枝雪穂はすぐに後を追った。
「いとこ、蕾さん!」木村雨音は泣きながら叫んだ。
彼女に残されたのは、押し寄せる記者たちの後ろ姿だけだった。