第121章 私が書いたの

「この二回だけにしましょう」木村裕貴は木村雨音に作詞を手伝ってもらうのがカンニング行為だと分かっていたが、以前の時枝秋の曲も買ったものではなかったか?

彼にできるのは、時枝秋のこれらの嘘を何とかフォローすることだけだった。

慎重に言葉を選びながら彼は言った。「コンテストが終わったら、藤原さんと相談して、あなたをプロの音楽学校に送り込もうと思います。時枝さん、あなたの声質、音程はとても素晴らしい。時間をかければ、必ずトップシンガーになれるでしょう。作曲能力も、これから少しずつ学んでいけばいいのです」

彼の言葉は、とても誠意のこもったものだった。

亮麗の一件があってから、彼の時枝秋に対する見方は、さらに一層変化した。

彼は時枝秋と真剣に協力し、彼女を本当の意味でデビューさせ、彼女の輝きをより多くの人々に見てもらおうと決意した。

そして最初に解決すべきは、彼女が信頼できない経路で曲を買うのを止めさせることだった。

時枝秋は木村裕貴の誠意を感じ取ったが、返事はしなかった。

木村裕貴は小林凌の歌声を思い出した。木村雨音のような作曲家に出会えた小林凌は、なんて幸運なのだろう?

歌手にとって、最も得難いのは良い曲に巡り会うことだ。

夏目休のような生まれながらの才能を持つ天才は、百年に一人の逸材で、望んでも得られるものではない。

そして小林凌のように、自分でも少し作曲ができ、さらに優秀な作曲家とも出会える、それは歌手の一生の夢だ。

「木村さん、私が作った曲を見てみませんか?」時枝秋は植物の世話を終え、手を洗って、自分の作品を木村裕貴に渡した。

木村裕貴は一目見て驚嘆した。この曲は...さっき聴いた木村雨音の『時光』よりもさらに才能を感じさせるものだった。

彼は思わず尋ねた。「もう木村雨音さんに手伝ってもらったの?」

そうでなければ、こんなに素晴らしいはずがない。

時枝秋は彼の目に驚きの色を見て取り、言った。「私が書いたんです」

「なかなかいいね」木村裕貴の口調は冷たくなった。

明らかに信じていなかった。

虚栄心と虚偽は、アーティストの生命力を破壊する武器でもある。

彼は直接批判せず、これからは時枝秋としっかり話し合って、正しい発展の道を示さなければならないと考えた。

時枝秋も彼が信じてくれるとは期待していなかった。