大島専務は時枝秋の後ろについて歩きながら、「あなたたち、医者と患者の関係だけだと思っていました」という自信に満ちた表情を浮かべていた。
時枝秋は携帯を受け取り、すぐに音声メッセージを送信した。「藤原修、お昼一緒に食べませんか。私たちこんなに長く知り合いなのに、まだデートしたことないでしょう?試してみない?」
藤原千華は目が飛び出るほど驚いた。
彼女は本当に気付かなかった。この清楚で可愛らしい美女が、こんなにも直接的で大胆で、少しの遠回しもなく。
情熱的!
爽快!
彼女は気に入った!
ただ、藤原千華は時枝秋から携帯を受け取りながら、予感していた。藤原修はこのLINEを完全に無視するか、それとも直接怒り出して、この可愛い美女に激怒するかのどちらかだろう!
そして後者の可能性の方が高そうだった!
彼はどんなことでも受け入れられる。藤原千華も彼に対して遠慮なく振る舞っていた。
でも時枝秋だけは例外で、彼の逆鱗だった。触れることも、話すことも、諭すことも許されない。
可愛い美女がこんなに直接的に彼を追いかけるなんて、それは彼の逆鱗に触れることじゃないの?
藤原千華は深く心配し、無意識に時枝秋を守るように手を伸ばした。「錦ちゃん、私が守るわ!」
時枝秋:「?」
大島専務は藤原千華の微妙な心情を理解した。結局のところ、病院中の人々が藤原修の冷たさと残忍さについて噂を聞いていたのだから。
彼はこっそりと拳を握りしめ、「僕も守りますよ!」
時枝秋:「??」
「ピンポーン」——
藤原千華の携帯が振動し、LINEに音声メッセージが届いた。
藤原修からだった。
彼女は震える手で携帯を持ち上げた。
相手は最愛の弟だけど、同時に最も怒らせてはいけない弟でもある。
パタッと音を立てて、携帯が床に落ちた。藤原千華が上手く持てなかったのだ。
大島専務が素早く拾い上げた。「藤原お嬢様」
藤原千華は自分の手のひらがまた痛んでいるのを感じた。小さな携帯すら持てない。
時枝秋が受け取り、画面を一瞥して言った。「聞きますか?」
藤原千華は唾を飲み込み、覚悟を決めた。藤原修の怒りなんて、どうってことない。
自分が原因で起きたことだから、罪のない錦ちゃんに被害が及ぶわけにはいかない。