第135章 まるで正常な人間じゃない

「傷跡を消すものよ。続けて使えば、手のひらに跡が残らないことを保証するわ」

藤原千華は瓶を握りしめ、とても興奮していた。

女性は美を愛する。彼女は高い地位にいるため、他の人よりも美にこだわっていた。

彼女の両手は、ピアニストの神の手と称賛され、骨節が見えないほど繊細で、一流の男性ピアニストに匹敵するほど長く美しかった。

女性は生まれつきの骨格と身長のため、指の長さは男性に比べて自然と劣ってしまう。

しかし、藤原千華の指は、そのような常識を完全に打ち破っていた。

本来なら、手の機能が回復できて、多少の傷跡が残っても受け入れられると思っていた。

しかし今、目の前のこの可愛い子は何を言っているの?

跡が全く残らないと言うのだ!

「錦、あなた本当にすごいわね!」藤原千華は彼女にキスしたいほど興奮していた。

時枝秋は急いで身を避けた。この姉弟は...趣味がどうしてこんなに似ているのだろう?

藤原千華は阻まれ、手の中の瓶を宝物のように大切そうに握りしめた。

彼女は突然、時枝秋の唇にも傷跡があり、見た目を損ねていることを思い出した。この薬が効くかどうか気になった。

しかし、そう思った瞬間、すぐに時枝秋のことを考えるのをやめた。

彼女の傷跡なんて、自分に何の関係があるというの?

あれは恩を仇で返す白眼狼、なぜ彼女のことを考える必要があるの?

藤原千華が急に不機嫌になったのを見て、時枝秋は注意を促した。「良い気分を保つことは、回復に役立ちますよ」

「錦、私が不機嫌になりたいわけじゃないの。ただ、ある人のことを思い出して、気分が悪くなっただけよ」

「私に話してくれませんか?」

藤原千華は言った。「ああ、こういう女がいてね。彼女の彼氏は極限まで彼女に尽くして、何でも彼女の言うとおりにして、命さえ捧げられるほどなの。でも彼女ときたら、それが全く見えていなくて、むしろクズ男のために命を懸けているの。彼のために狂い、彼のために暴走して、彼のために壁に突っ込んで...」

時枝秋はそれを聞いて、自分のことを言っているとすぐに分かった。軽く唇を噛み、目尻が引きつった。

藤原千華の口の中では、自分は脳なしファンとあまり変わらないということだろう。

そう考えると、自分の脳なし行動をずっと受け入れてくれていた藤原修が少し可哀想に思えた。