「時枝秋が前に言わなかったのは、木村雨音に目配せしたくなかったからでしょう?あの時彼女を非難すれば、逆に注目を集めることになったはず!」
「今になって木村雨音の以前の行動を振り返ってみると、完全に計画的だったんです!特に以前、わざと時枝秋のマスクを落としたこともありましたよね!きっと彼女はあの時、時枝秋の顔に傷があることを知っていたんです!」
「そうそう、こんな親友って、本当に怖いほど計算高いよね!」
「木村雨音、芸能界から出て行け!業界にはあなたのような人は必要ない!」
木村雨音は優勝の夜に逆転を図り、美貌で再び地位を得て、番組に出演したり、商業イベントに参加したり、以前の曲を歌ったりして、時枝秋のような高い地位には及ばなくても、なんとか食いつなげるという夢が、一瞬にして砕け散った。
岡元経理が彼女のために交渉していた小規模ブランドのプロモーション活動も、すべて水泡に帰した。
交渉が成立していたドラマ二本のエンディング曲の歌唱も、相手方から契約解除通知が届いた。
結局のところ、このような時期に、木村雨音のような人物を起用して自分の評判を落とすことを望む人などいないのだ。
……
木村裕貴は時枝秋の創作能力が驚異的だということを以前から知っていた。
今、木村雨音のすべての楽曲が列挙されているのを見て、彼は自分がまだ時枝秋を過小評価していたことに気付いた。
彼は元々、木村雨音にも何曲か見せられる曲があり、夏目休の曲を盗用したのは一時の過ちだと思っていた。
今になってみれば、木村雨音の見せられる曲は全て時枝秋の手によるもので、木村雨音自身も確かに創作はしていて、番組全体で彼女のオリジナル曲を2曲使用していた。
この2曲は、彼女の最も評価の低かった曲で、知名度も伝播力も最も低い2曲だった。
「木村さん、岡元経理と私の著作権料の精算をお願いします」時枝秋は著作権証明書を木村裕貴に送った。
木村裕貴は渇いた声で言った:「時枝秋、どうして前に教えてくれなかったんだ?」
言い終わって、彼は思い出した。時枝秋は言っていたのだ。
自分が信じなかっただけだ。
時枝秋は淡々と言った:「あの時、私が木村雨音に権利を主張しても、また私と小林凌を絡めるだけでした。私が小林凌をどれほど嫌っているか、あなたも知っているでしょう。」