第167章 美しさは比較から生まれる

堀口楓は慌てて紙ナプキンを取り出して口を拭いたが、時枝秋が彼女をからかっていることに気づいた。

でも彼女は怒るどころか嬉しくなった。可愛い女の子はいくら見ても飽きないし、まして相手が時枝秋なんだから!

彼女はとても満足していた。時枝秋があんなに綺麗だなんて、アンチたちの顔を完全に潰したようなものだ!

アンチの次に顔を潰されたのは木村雨音だった。

今回、木村雨音は岡元経理のコネを使って、優勝の夜の同窓会ステージに再び立つことができた。念入りに準備をし、この3分間の出演のために、自分を驚くほど魅力的に仕上げた。

番組が完全に終わる前に、ネット上には彼女が他を圧倒したという記事が大量に出回った。

確かに彼女は綺麗で、いつも自尊心が高く、自分が時枝秋に劣っているとは思っていなかった。

時枝秋が姿を見せる前は、確かに大きな注目を集め、コメント欄も容姿を褒める声で溢れていた。

しかし、この良い状況は30分も続かなかった。

時枝秋がマスクを外した瞬間、ほとんどの人が木村雨音の投稿を見捨て、時枝秋の方に注目を移した。

美しさは比較によって際立つものだ。

時枝秋がいない時は、みんな本当に木村雨音が素晴らしく、容姿が抜きん出ていると思っていた。

時枝秋が現れると、木村雨音のレベルの容姿では物足りなくなった。

みんな:「さっきまで木村雨音が綺麗だと思ってたのに、今見るとそれほどでもないな?」

ある人が返信:「当然でしょう。時枝秋が高級料理なら、木村雨音は普通の炒め物程度。高級料理を食べた後に他のものを食べる気になりますか?」

みんなが深く同意し、時枝秋に投票しなかったことを後悔する人もいれば、全ての票を他の出場者に入れてしまったことを後悔する人もいた。

時枝秋の写真を見ながら、みんなは彼女が出場時に歌った全ての曲を急いで探し出して聴き始めた。

あんな顔で恋愛ソングを歌われたら、他のことなんて考えられないだろう?

木村雨音の圧倒的な美しさを謳う記事は、むなしい結果に終わった。

そしてこの時、時枝秋はツイッターで木村雨音を直接タグ付けし:「著作権料の精算をしましょう。」