第179章 後ろの席に座りなさい

「早く入っておいで、早く入っておいで」と時枝お爺さんは嬉しそうに言った。

時枝秋が入ってくると、医者と看護師は彼女の美しさに目を奪われた後、退室した。

時枝お爺さんは安堵の表情で彼女を見つめながら言った。「長い間休んでいないだろう？帰ってきたら、しばらくゆっくり休んでから考えよう。マネージャーに来てもらって、よく話し合いたいんだ」

他人はあなたがどれだけ高く飛べるかしか気にしない。

本当にあなたのことを思う人だけが、あなたが疲れていないか気にかけてくれる。

「実は大丈夫です。私の仕事はそれほど多くないんです」と時枝秋は笑って答えた。

「圧力をかけられているのか？」時枝お爺さんは急に怒り出した。

「違います。マネージャーが私に割り当てる仕事は、比較的余裕があるんです」時枝秋は彼が立ち上がろうとするのを押さえ、興奮しすぎないようにした。

「それならよかった、よかった」時枝お爺さんは心配そうに彼女を見つめ、しばらく考えてからゆっくりと言った。「秋、やっぱり戻って勉強したらどうだ？」

時枝お爺さんが最も心配していたのは彼女だった。結局のところ、時枝家の正統な子供ではないため、彼以外の人々は彼女に対して冷淡な態度を取っていた。

芸能界の情勢は目まぐるしく変化する。時枝お爺さんは、彼女に学歴がないと将来の道のりが困難になることを心配していた。

「はい」時枝秋はすぐに承諾した。

この人生をやり直して、彼女は自分を心配してくれる年長者を心配させないようにするつもりだった。

……

「学校に戻って勉強するつもりなら結構です」浜家秀実は目の前に立つ時枝秋を見て、冷淡な口調で言った。「明日にでも学校の先生に手配してもらいましょう」

『國民シンガーソングライター』という番組で時枝秋は悪くない成績を収めたが、浜家秀実から見れば、たいしたことはなかった。

芸能界の歌手やタレントなんて、時枝雪穂のピアノや絵画の腕前には到底及ばないと思っていた。

「手配は必要ありません。マネージャーが学校と話し合います」時枝秋はそう言って、背を向けて立ち去った。

浜家秀実は彼女の後ろ姿を見つめ、顔色を悪くした。なんて無礼な子だ！これだけ長い間育ててやったのに、この態度？