その十二年間、尾張靖浩は確かに時枝雪穂と過ごす時間が少なかった。尾張家の発展のために、彼は家族の事業に多くの時間を費やしていた。
時枝雪穂を辺鄙な町で生活させたのも、彼女を守るためだった。
しかし、小さな町での生活であっても、尾張お爺さんは生活面や家庭教育の面で、時枝雪穂を決して粗末に扱うことはなかった。
そのような町での生活でも、彼女は各科目の家庭教師について、様々な習い事に通い、送り迎えの車があり、家での衣食住すべてが彼女優先だった。
彼女たちが十二歳の時、二人の身分に関する問題が発生し、時枝雪穂は急いで連れ去られた。
そして尾張靖浩が時枝秋を迎えに来るはずだったが、約束を破ってしまった。
前世で、時枝秋はこのことがきっかけで、自分が見捨てられたと感じた。
時枝家は自分を好まず、尾張家の者も迎えに来ない。繊細で傷つきやすい時期の少女は極度の自己卑下に陥り、浜家秀実からの打撃や、時枝雪穂の度重なる嫌がらせ、そして周囲の噂話により、彼女の心は崩壊し、バランスを失い、深淵へと落ちていった。
そのため、後に尾張家が彼女を迎えに来た時、十五、六、七歳の頃、家族総出で彼女を連れ出そうとしたが、彼女はすべて拒否した。
前世での経験があったからこそ、尾張家の者が自分をどれほど愛していたかを知っていた。後の陥れられた日々の中で、藤原修以外では、彼らだけが自分のことを気にかけてくれていた。
二年前、兄と父が一緒に来た時の、自分のわがままで横柄な態度がどれほどひどかったかを思い出し、時枝秋は密かに後悔した。
後悔すると、彼女の指はさらに強く握りしめられた。
彼女が物思いに耽っていると、手の甲に温もりを感じた。藤原修の手のひらが覆いかぶさり、彼女の指全体を包み込み、強く握りしめていた指を一本一本解きほぐし、彼の手と絡ませた。
「緊張するな」藤原修は珍しく人を慰め、言葉も簡潔だった。
時枝秋はその言葉を耳にして、心の中の複雑な感情が幾分か軽くなった。藤原修の目を見つめ、笑顔を浮かべた。
……
ドイツからの帰りの便が、ゆっくりと着陸しようとしていた。
車椅子で搭乗した乗客がいたため、足が不自由だということで、客室乗務員が何度も声をかけ、何か手伝いが必要かどうか尋ねていた。