第189章 尾張家の両親

今の時枝秋の演奏はまさにそのようなものだった。

時枝雪穂は最初は笑顔を浮かべていたが、徐々に笑顔が消えていった。

江頭瑞希はむしろ自分が間違いを犯してしまい、図らずも時枝秋に活躍の場を与えてしまったと感じていた！

彼女たちには大きな疑問があった。時枝秋は一体いつバイオリンを習ったのか？

彼女たちは以前の時枝秋が基本的に何も学んでいなかったことを知っていた。十二歳の時、身の上の問題で、物思いにふけって学ぶ時間がなく、その後は小林凌を追いかけていた。

なぜ、彼女は今こんなにも優秀なのか？

スポットライトが彼女に当たり、シンプルなシルエットを浮かび上がらせた。

『ハンガリー舞曲第五番』はハンガリー民族特有の賑やかさと喜びを帯びており、時枝秋の軽やかな装いはこの曲にぴったりと合っていた。

先ほどの時枝雪穂が着ていた複雑で重たい姫ドレスを思い返すと、むしろ不適切に見えた。

一曲が終わると、会場全体が数秒間静まり返った後、ようやく熱烈な拍手が沸き起こった。

時枝秋のファンたちはこの時になってようやく歓声を上げ、彼女の名前を大声で呼んでいた。

江頭瑞希は時枝雪穂を助けるどころか、失態を演じてしまったことを知り、気を取り直して舞台に上がり、学校記念行事の幕を下ろした。

彼女はマイクを持って舞台を降りるとすぐに、時枝雪穂を追いかけた。「雪穂、待って」

時枝雪穂は気分が悪く、彼女に取り合う気分ではなかった。

二人が歩いていく途中、時枝秋と時枝雪穂を比較する声が聞こえてきた。

本来なら今夜は時枝雪穂が一人で輝き、注目を集める時だったのに、この予期せぬ出来事のせいで時枝秋が急に頭角を現し、時枝雪穂はかえって非難を浴びることになった。

しばらくして、先生たちが江頭瑞希を呼び出して今夜の舞台での失態について話し合おうとしていた。高校三年A組の生徒を急遽舞台に上げたことで、時枝秋のクラスの全ての教師が今、非常に不機嫌になっていた。

どうやら、江頭瑞希にはまだ説明しなければならないことがありそうだった。

学校記念行事の公演の後、晩餐会が控えていた。

時枝雪穂は断りたかったが、彼女は以前から注目を集めすぎていて、多くの人が彼女を待っていたため、出席せざるを得なかった。