第194章 前の恥を雪ぎたい

尾張靖浩は体調が良くなかったため、やや鬱々として志を得ず、五官は申し分なかったものの、どうしても灰色の霧がかかったような印象を与え、実年齢よりも老けて見えた。

特に車椅子に座っていると、身長も人より一段低くなり、とても地味な印象を与えてしまう。

誰も彼が、かつて定戸市の名門・尾張家の若旦那で、後に映画界で主演男優賞の受賞者となった人物だとは気付かなかった。

堀口碧は長年尾張靖浩の介護に奔走していたため、優雅さは漂わせていたものの、彼女もかつての堀口家で愛され尊敬された令嬢だったとは誰も知らなかった。

二人が着ている服は、時枝雪穂が言うところの手作りのもので、ブランドタグは一切なく、当然ブランドや価格も分からなかった。実際の価値を言えば、おそらく皆驚くだろうが。