第197章 両親のために面子を取り戻す

尾張靖浩と堀口碧は、娘が全てを理解していることに気付かなかった。

彼女は全てを知っていた。

本当に娘に辛い思いをさせてしまった。

時枝清志は浜家秀実を冷たい目で見つめながら言った。「秀実、お金は君が受け取ったのか?」

浜家秀実は即座に震え上がった。

確かにお金は彼女が受け取っていた。

時枝秋が十二歳の時、尾張家からは誰も来なかったが、三十万円の現金を人づてに送ってきた。

その後、時枝秋が三年連続で離れなかった時も、尾張家は毎年三十万円を一銭も欠かさず送り続け、同時に尾張家夫妻からの言付けも届いた。「どうか時枝秋をよろしくお願いします」と。

十五歳の時に時枝秋が引っ越した後も、浜家秀実は黙っていたため、尾張家からのお金は途切れることなく送られ続けた。

再び台頭した時枝家にとって、三十万円の現金はたいした額ではなかったが。

しかし浜家秀実も家業が行き詰まり、現金不足に苦しんだ経験があったため、再び裕福になった後も、お金に対してとても執着があった。

蚊の肉でも肉のうちと、他人の娘を無償で育てる気はなかったので、遠慮なく受け取っていた。

人を使って状況を調べさせたところ、尾張家が住んでいた町で、政府が新幹線建設のために住民の家や土地を買い上げ、かなりの補償金を支払ったと聞いたので、尾張家から送られてくるお金に対して後ろめたさは感じなかった。

田舎町出身の人が、直接この件について問い詰めてくることはないだろうと思っていた。

時枝秋は今や大金を稼いでいるので、このお金のことなど持ち出さないだろうと。

しかし、思いがけず時枝秋がそれを持ち出してきた。

しかも時枝家と小林家の親戚友人全員の前で。

受け取ったものは全て返さなければならない、食べたものは全て吐き出さなければならない!

「聞いているんだ、お金を受け取ったのは君なのか?」時枝清志は厳しい声で言った。