安藤誠もすぐに元気を取り戻した。「そうだ、時枝秋は今ライブ配信でダンスをしているよね?この機会に、私たちもいいニュースを発表できるわ」
文岩薫里は特に意見はなかった。
一度負けたからといって怖がることはない。何事も努力を重ねていく必要がある。
人生は長い。一度の敗北が永遠の敗北だと誰が言えるだろうか?
文岩薫里は、すぐに日本舞踊協会からの入会承認書をツイッターに投稿した。その瞬間から、彼女は日本舞踊協会の一員となったのだ。
「日本舞踊協会に感謝いたします。15年間の努力がこの栄光の瞬間のためにありました。これからも初心を忘れず、素晴らしいダンスライフを送っていきます」文岩薫里のツイッターの内容は、品があり、堂々としていた。
ファンたちは彼女の広告データが時枝秋に及ばないことを心配していた。
彼らはたくさんの理由を探し出した。「薫里はいつも学生ファンに無理な買い物をさせないように言っているから、今回は成績が悪かったんだ」などと。
「やっぱり私たちのローズちゃんは素晴らしい。お金で数字を操作すると、必ず報いがあるはずよ」
「私たちの数字も十分強いのよ。でも相手が不正な手段を使うなら、どうしようもないでしょう?」
木村裕貴が自腹で十数万セットを買い、時枝秋の面子を保ったという人まで出てきた。
少し考えれば分かることだが、これは荒唐無稽な話だ。十数万セットといえば数十億円の金額になる。どの企業がそんな愚かな金の使い方をするだろうか?
今、時枝秋はライブ配信でダンスを踊っており、文岩薫里のファンたちは不満を抱えながら、言い訳を探していた。
しかも、時枝秋のダンスを見ている人が多く、彼女が踊っているのは一体どんなダンスなのか、なぜ普段見るものとこんなに違うのに、こんなにも心を魅了し、見続けたくなるのかと、絶えず質問が寄せられていた。
何人かの舞踊家も特別に解説に出てきた。「時枝秋が踊っているのは、どうやら古典舞踊の一種で、非常に高度なものらしいです。私も先生から聞いただけです。時枝秋と切磋琢磨できる機会があればいいのですが」
文岩薫里が今投稿したツイッターは、まさにファンたちの心臓に打ち込まれた強心剤のようだった。