第230章 彼女に心を動かされやすくなっていく

しかし、家庭の様々な事情により、この件は遅れてしまった。

彼は常に彼女の面倒を見たいと思い、兄としての責任を果たしたいと考えていた。

しかし、時枝秋は彼に対して兄妹の情など全くなく、むしろ限りない嫌悪感しかなかった。

彼自身も、一体何がいけないのか分からなかった。

妹の髪を梳かすというシーン、長い間想像してきたが、それはただの想像に過ぎなかった。

まさか本当に実現するとは思わなかった。

時枝秋とこのような和解を果たせたことは、実際には彼の耳が治ったことよりも大きな意味があった。

妹の笑顔を見て、兄としての責任を深く感じ、彼女の笑顔に自然と感染された。

背中に冷たい感覚を感じるまでは、思わず振り返ってしまった。

振り返ると、藤原修の冷たい視線が見えた。

堀口景介は彼の目の中に言い表せない怨念のようなものを感じた。