「楽曲の収益は税引き後、あなたの口座に振り込まれました」これは最近、木村裕貴が時枝秋によく言う言葉だった。
現在の音楽市場全体は不景気だが、音楽を聴きたい人はまだまだ多い。共感を呼ぶ曲を書けば、みんな少しのお金を払うことを厭わない。
以前のように、CDやカセットテープを制作して販売するしかなかった時代と比べて、今の環境にも良い点がある。
例えば、曲を書いて録音さえすれば、すぐに販売できる。価格も非常に安く、一曲数百円程度なので、誰でも手が届く。
歌手も十数曲集めてアルバムを出す必要がない。
これからの楽曲リリースは、時枝秋のインスピレーション次第だ。
彼女が学校に戻ると、季山梨香が彼女を訪ねてきた。
「時枝さん、三つのコンテストにエントリーしておいたわ」
「コンテスト?」