第232章 家族総震撼

「楽曲の収益は税引き後、あなたの口座に振り込まれました」これは最近、木村裕貴が時枝秋によく言う言葉だった。

現在の音楽市場全体は不景気だが、音楽を聴きたい人はまだまだ多い。共感を呼ぶ曲を書けば、みんな少しのお金を払うことを厭わない。

以前のように、CDやカセットテープを制作して販売するしかなかった時代と比べて、今の環境にも良い点がある。

例えば、曲を書いて録音さえすれば、すぐに販売できる。価格も非常に安く、一曲数百円程度なので、誰でも手が届く。

歌手も十数曲集めてアルバムを出す必要がない。

これからの楽曲リリースは、時枝秋のインスピレーション次第だ。

彼女が学校に戻ると、季山梨香が彼女を訪ねてきた。

「時枝さん、三つのコンテストにエントリーしておいたわ」

「コンテスト?」

「数学・物理・化学の全国コンテスト、いわゆるオリンピックよ。この大会は難しい問題が出題されるけど、あなたなら対応できると思うわ」季山梨香は考えながら言った。「あなたの現在の試験の成績は確かに良いわ。でも、大学入試というのは、予期せぬことが起こりうるものよ。万全の準備が必要よ。数学・物理・化学の全国オリンピックは、S国が認める入試加点項目で、成績に応じて5〜20点の加点があるの。もしあなたがこれらのコンテストで好成績を収めれば、入試はもっと楽になるわ」

季山梨香は時枝秋のことを様々な面から考慮して、この三つのコンテストへの参加を決めたのだった。

彼女は木村裕貴とも相談し、マネージャー側に時枝秋の学業を優先させ、この決定を支持してもらえるよう話をつけていた。

本来、季山梨香は木村裕貴を説得するための理由を山ほど用意していたのだが、木村裕貴は話を聞くなり二つ返事で同意し、直接時枝秋に伝えるように言った。

今のエンターテインメント会社は、みんなこんなに優しいのだろうか?

そこで季山梨香は直接時枝秋と話をすることにした。

時枝秋はこの種のコンテストにあまり関心を示さなかったが、季山梨香の期待に満ちた眼差しに応えて、うなずいた。「では、季山先生のご指示に従います」