時枝秋はそれを受け取り、魅惑的な笑みを浮かべて「ありがとう」と言った。
葉山暁子は彼女の突然の美しさに驚き、言葉を詰まらせながら言った。「時枝さん、笑顔が、と、とても綺麗です。いえ、笑ってない時も綺麗ですけど、笑うと...まるで天女のようです」
「そう?」時枝秋は実は分かっていた。
だからこそ彼女は笑うことを控えめにしていた。
今では、他人に笑顔を見せることさえも惜しんでいた。
彼女は何気なく葉山暁子の間違い集を開いた。数学の天才である葉山暁子は、確かに多くの人を超える学力を持っていた。
しかし、時枝秋は彼女が苦手としている問題を素早く見つけた。葉山暁子はこのタイプの問題に慣れていないようだった。
「葉山さん、この問題、どういう解き方をしたの?」と彼女は尋ねた。
葉山暁子は時枝秋が問題で詰まったと思い、問題を受け取って感心しながら言った。「この問題は難しいんです。ここで詰まるということは、あなたの基礎力がすごく高いってことですよ。私はこう解きました...」
自分の考え方を説明すると、時枝秋は頷いて「その解き方は悪くないわ。私にもちょっとヒントが浮かんだわ。こうすれば...」
時枝秋の説明を聞いて、葉山暁子は目から鱗が落ちる思いだった。「どうしてその方法を思いつかなかったんだろう?あなたの方法なら、同じような問題が出ても怖くありません!」
時枝秋は目尻を少し上げて「他に質問はないわ」と言った。
近くで食事をしていた文岩薫里は、この光景を見て密かに首を振った。
数学という科目は、急な補習で追いつけるものではない。堅実な基礎と長期的な思考訓練が必要で、自分のようにね。
時枝秋が急に勉強を始めても、良い結果は望めないだろう。
もしかしたら、カンニングでもするつもりかしら。
でも試験でカンニング...そんなの夢物語よ。
たとえ誰かが時枝秋を助けようとしても、文岩薫里は目の前でそんなことが起こるのを黙って見過ごすわけにはいかない。
三日間の研修はあっという間に過ぎた。
いよいよ本番の大会が近づいてきた。
すべての生徒が緊張していた。これは大学入試の加点に関わるだけでなく、この舞台で自分を証明できるかどうかにも関わっていた。