彼は試験用紙を素早く目を通し、完璧な解答はもちろんのこと、その文字だけでも水野学長を完全に魅了してしまった!
「時枝秋がどの学部に進みたいか、彼女に選ばせよう!」水野学長は大きく手を振り、これで特別枠の申請すら必要なくなった!
菊地健夫は傍らに立ち、信じられない様子で「水野学長……」
水野学長は試験用紙を彼の手に押し付けた:「自分で見てみなさい。」
菊地健夫は試験用紙に目を通した。体育学部の教師とはいえ、やはり定戸市大学のような正規の大学で採用された教師だけあって、基本的な資質は持ち合わせていた。
一目見ただけで、この試験用紙の実力が分かり、顔色が変わり、足がふらついて立っているのがやっとだった。
水野さんは軽やかな足取りで部屋を出て行った。言い表せないほどの興奮を抱えながら。
今となっては、堀口景介だけでなく、もう一人の逸材を手に入れたようだ!
入学担当の教師が時枝秋に連絡しようとしたとき、水野学長は言った:「この電話は私が直接かけます!」
午後の日差しが心地よかった。
珍しい週末の休暇に、時枝秋は裏庭のブランコに座り、本を読みながら果物を食べていた。
彼女が植えた様々な花や草は、庭一面に分厚い緑の絨毯を敷き詰め、所々に赤やピンクの花が顔を出し始めていた。
庭全体に清々しい香りが漂っていた。
大島執事がお茶を持ってきて、その態度には彼女本人への敬意が多分に含まれていた。
以前は藤原修のために彼女を尊重していたが、今では大島執事は時枝秋本人を軽視できなくなっていた。
時枝秋が植えたこれらの花のおかげで、大島執事の持病の偏頭痛が最近特によくなってきていた。前回何気なく話題に出したとき、時枝秋は庭から数株を抜いて彼にあげ、最近では発作の間隔がどんどん長くなっていた。
「時枝さん、お茶が用意できました。」
「ありがとう。」
大島執事はお辞儀をして、ゆっくりと下がっていった。
時枝秋の電話が鳴り、彼女はすぐに出た。
電話の向こうは水野学長で、直接会って入学の件について話し合いたいと申し出た。
時枝秋は少し考えてから言った:「私は定戸市大学に行くつもりはありません。」
「えっ?なぜですか?時枝さん、あなたの成績はとても素晴らしく、専攻も自由に選べますよ!他に何か要望はありますか?」