第271章 看護師に面子を潰される

文岩礼司は知らせを聞くと、すぐに慌てて患者を見舞いに駆けつけた。

文岩薫里は歩きながら尋ねた。「お父さん、今回も誰が堀口景介先生に頼んで治療してもらったのかしら？」

「私にもわからない」文岩礼司は気分が良くなかった。誰かが先に承認者に近づき、母親の治療を手伝ってもらったことで、先機を逃してしまい、心の中は重くのしかかっていた。

文岩薫里は考え込みながら言った。「これからは、私たちも事前にもっと準備をしておく必要がありそうね」

この言葉に文岩礼司は同意した。

そう言えば、堀口景介は自分を断っておきながら、結局は誰かに買収されて手術をしたのだ！

表面上は正直で清廉潔白を装っても何の意味があるのか？裏では誰かからいくら受け取ったのかもわからない。

外環状線の外まで予約が埋まっていると言っていたくせに、結局は誰かの手術をしたではないか。

偽善者め。

文岩礼司は心の中で非難した。

父娘は病室の場所を聞き出し、そちらへ向かった。

文岩薫里が礼儀正しくドアをノックすると、看護師がドアを開けた。「どちら様でしょうか？」

「浜田おばあさんのお見舞いに来ました」

看護師は言った。「どうぞお入りください」

堀口景介と時枝秋は浜田おばあさんのベッドの前に立っていた。

さっき患者の容態が悪化したと聞いて慌てて駆けつけたが、結局は杞憂に終わり、おばあさんには何の異常もなかった。

堀口景介は状況を説明していた。「あまり心配なさらないでください。傷の痛みは正常な現象です。もし我慢できないほど痛むようでしたら、鎮痛剤を処方することも考えられます。でも、まだ耐えられる範囲でしたら、少し我慢してください」

文岩礼司と文岩薫里は堀口景介がちょうどいるのを見て、少し気まずくなった。

しかし文岩礼司はすぐに心の中の軽蔑の念を抑え、挨拶をした。「堀口先生、こんにちは。また会えましたね」

文岩薫里も時枝秋に挨拶した。「時枝さん、なんて偶然でしょう」

時枝秋は彼女に頷き返し、挨拶とした。

堀口景介は多くの患者の家族や見舞客を見てきており、礼儀正しく頭を下げた。

「堀口先生がこんなに早く浜田おばあさんの手術を終えられるとは思いませんでした。その医術の高さには本当に敬服いたします」文岩礼司は褒め称えた。

誠意を示そうとして、つい声が大きくなってしまった。