ネット上には至る所に真摯な声が溢れていた。
木村裕貴はこちらで忙殺されていた。
今までに、彼は十八件の電話、二十通のメール、四十三件のLINEでビジネスの相談を受けていた。時枝秋の二曲をドラマの挿入歌として使いたいという話や、番組のテーマソングとして著作権を購入したいという話、『最初の夢』を広告曲として使用したいという話もあった。
広告曲を希望する数社は「時枝秋が広告撮影に参加できるなら、それに越したことはない」とまで言っていた。
木村裕貴はそれぞれに「時枝秋はまもなく大学入試なので、楽曲の著作権については相談可能ですが、本人は今のところ広告出演は難しいです。ただし、将来的には詳しく相談させていただきたいと思います」と返答するしかなかった。
文岩薫里は惨敗を喫した。
彼女は机に向かい、ペンを走らせ、次々と音符を書き連ねていった。
でも、だめだ、だめなんだ!
すべての音符を組み合わせても、時枝秋の曲ほど良い響きにならない!
時枝秋のような感動を与えられない!
彼女はペン先を強く押し付け、紙に長い傷をつけた。
LINEには友人からのメッセージが次々と届いていた。
文岩薫里は虚ろで鈍い目つきで、しばらくしてからようやく手に取り、慰めのメッセージを一つ一つ読んでいった。
「薫里、あなたが一番すごいのよ。時枝秋なんて一時的な注目を集めているだけで、あなたと比べものにならないわ。あなたは何年も作曲を学んできたでしょう?」
「作曲は継続的で安定した output が必要よ。でも時枝秋は明らかに一時的な熱意だけで、時間が経てば並の人になるわ」
「あなたは正規の先生に教わった正規の生徒よ。時枝秋なんて独学でしょう。一度うまくいったからって、毎回うまくいくわけないじゃない」
「それに大学入試も近いし、時枝秋は作曲の才能はあるかもしれないけど、他の面であなたには及ばないわ。あなたがトップの大学に入学したら、彼女なんて完全に見下せるわよ!」
「そうよ、彼女はいつも成績がいいって自慢してたけど、実際は540点程度の平凡な成績じゃない。二つのトップ校から同時に合格をもらったなんて言ってたけど、結局行かなかったでしょう?きっと単なる売名行為よ!」
「あなたが合格したら、彼女なんて完全に見下せるわよ」