第296章 私は他の人に変えても構わない

「急用があって出て行ったみたいです」と龍崎雄は言った。「でも何の用事かは言っていませんでした」

「じゃあ、見てきます」

「ええ、どうせ発表会ももう終わりですから。時枝秋を見つけたら教えてください」

尾張靖浩は続いてステージを降りた。

時枝秋はドレス姿で、ゆっくりと歩いていたので、尾張靖浩はすぐに追いついた。

「時枝秋!」尾張靖浩は足早に彼女に追いついた。「どうしたの?何かあったの?」

「何でもないわ」時枝秋は父親を心配させたくなかった。「ただ、大勢の人がいる場所にいたくなくなっただけ」

「確かに息苦しいよね」尾張靖浩も認めた。今の発表会の雰囲気は、以前とは違っていた。

時枝秋は藤原修に電話をかけたが、応答がなかった。

尾張靖浩も彼女の不安を察した。「藤原修と何かあったの?」