第301章 大物が不満げ

「そうですね、ははははは」萩原衡は返事をして、もう余計な一言も言う勇気がなかった。

他の人たちも不安と警戒を保ち、時枝秋が突然何かしでかすのを恐れていた。

無理もない。時枝秋は以前、浅湾別荘から逃げ出すために様々な策を練り、この一行は真っ先の被害者だったのだから。

「友達同士、これからはもっと集まるべきですね。そうそう、今夜はお酒を持ってきましたから、みんなで味わいましょう」時枝秋の今夜の装いも話し方も、まるで別人のようだった。

本間拓海は黙り込み、荒木俊は驚きのあまり何も言えなかった。

美人お姉さんに抗えない青木空だけが「いいですね、いいですね!」と相づちを打った。

萩原衡は懲りない天然で、すぐに「本当ですか?どんなお酒ですか?じゃあ、しっかり味わわないと!でも……」と同調した。