第325章 前途を台無しにしたくない

堀口正章は気にしていなかった。

この状況でも、平然とした様子を保っていた。

時枝秋は自分がかなり冷静な性格だと思っていたが、堀口正章は自分以上に冷静だった。

おそらく何も恐れるものがないからこそ、嵐に直面しても少しも動じないのだろう。

「そうだ」と堀口正章が言った。「この生地に粗布を少し加えて、衣装をより重厚で質実にしてみたらどうだろう?」

「うん、それもいいけど、なびき具合が損なわれないかな?」

「なびき具合を保つために、裾の部分に特別な処理をして、古風な雰囲気を残しながら、舞踊の優美さも損なわないようにするつもりだ」

二人がこの話題になると、ネット上の噂話を忘れ、専心して議論を始めた。

尾張家も堀口正章への攻撃をそれほど気にしていなかった。

家族全員が紛れもないS国人なのに、容姿といくつかの根拠のない推測だけでH国人のレッテルを貼られるのは、本当に笑ってしまうほどだった。