第337章 トロフィーを手に取る

特に沢口満は、彼のデザインは実際に小林凌の以前のものとほとんど同じで、小林凌が着ると格好いいが、ただ格好いいだけで、特徴や光るものは以前と変わらなかった。

デザイナーとして、彼のデザインは小林凌本来の長所を全く活かせていなかった。

紺野広幸がいなければ、誰もこの点に気付かず、小林凌が格好いいということだけで終わっていただろう。

紺野広幸との対比があって初めて、優秀から天才までの差が普通の良さと比べられ、平凡さが際立ってしまった。

小林凌チームの丹精込めた仕事も、紺野広幸三人の登場によって、完全に霞んでしまった。

今、小林凌は授賞式を待つだけだった。

受賞してこそ、この一戦を引き分けに持ち込めるのだ!

時枝秋も真剣に授賞式に耳を傾けていた。

現在の授賞式は、通常小さな賞から大きな賞へと進行する。今回時枝秋は授賞式に参加していないため、傍観者として参加することで、かえってその中の傾向が見て取れた。

彼女は気付いた。今回の授賞式の結果は、前世の記憶とかなり近いものだった。

ここ数年、S国の音楽界は資本に支配され、徐々に衰退し、良い曲は少なく、歌手たちも次々と転職していった。

小林凌のような存在は、アイドルとしか呼べず、歌手とはあまり関係がない。

しかし真夏の夜の音楽祭という重要な最優秀男性歌手賞は、確か紺野広幸に贈られたはずだった。

他の賞については、完全に公平公正とは言えないまでも、真摯に創作活動を行う歌手やチームに与えられるよう努力されていた。

おそらく、まだ初心を持ち続けている資本家たちが、音楽界のこの混乱を必死に変えようとしているからだろう。

紺野広幸のような本当に創作を愛する人は、称賛に値する。

時枝秋は、自分の記憶が間違っていないことを願った。

彼女は紺野広幸を横目で見た。自分が賞と無縁だと知っているからか、彼はリラックスした様子で、ただの観客として参加しているようだった。

堀口正章はさらにリラックスしており、時々紺野広幸と話をし、表情は生き生きとしていた。

時枝秋は目の前の、自分が大切に思う二人を見つめながら、記憶が間違っていないことと、自分が取り持った二人の協力が順調に続くことを願った。

彼らの才能は認められるべきであり、互いに協力し合う価値がある。