第345章 叫んでもいいですか?

園田保夫も立ち上がって尋ねた。「誰が届けてくれたの?」

「時枝秋よ」と藤原千華は答えた。

「時枝秋?」園田保夫は目を凝らして見つめた。

藤原千華と同様に、彼も素晴らしいピアノを数多く見てきた。どんな高級で上等なものでも、見て触れてきた。

ピアノを弾くというのはもともとお金のかかる趣味だ。まして彼らのような様々な大会に出場してきた者なら尚更だ。

時枝秋が贈ったと聞いて、園田保夫はこれがごく普通のピアノなのだろうと思った。

「なぜ彼女があなたにピアノを贈るの?」と園田保夫は尋ねた。

「前に少し誤解があってね」と藤原千華は率直に答えた。「送らないでって言ったんだけど、聞く耳持たなかったわ」

彼女は執事に言った。「開けて確認してください。問題なければ後で署名するわ」

そう言うと、園田保夫と一緒にお茶を飲み続けた。