第344章 妹よ、姉にチャンスをください

藤原修が立ち上がると、藤原千華は生き生きとした表情で時枝秋に何かを話しかけていた。時枝秋は淡々とした様子だったが、藤原千華に対してとても忍耐強く、彼女が何を言っても頷いていた。

「何を話してそんなに楽しそうなの?」秦野伸年が尋ね、二人にお茶を注いだ。

藤原千華が言った。「時枝さんにピアノを教えたいって説得してたの。あなたは知らないでしょうけど、彼女は先ほど入門曲を軽く弾いただけなのに、まるで巨匠のような風格があったのよ。彼女が学ぶ気になれば、きっと国際的な賞も取れると思うわ」

「千華は自分のように、いつもピアノのことばかり考えているとでも思ってるの?」秦野伸年は無奈気だが愛情を込めて言った。

「私が言ってるのは本当よ!」藤原千華は怒って言った。「信じられないなら、動画を見せてあげられるわよ!」

彼女は練習する時はいつも動画を撮影し、後で自分の演奏技術を振り返って、より上達させるようにしていた。

秦野伸年は笑って言った。「信じてるよ」

「姉さん、時枝は十分忙しいんだ」今夜ずっと黙っていた藤原修が、時枝秋を自分の側に引き寄せて言った。「もう彼女の休息時間を奪わないでくれ。私たちは帰るよ。おばあさんに何か変化があったら、私に電話してくれ」

藤原千華は藤原修の前では何も言えず、ただ彼が時枝秋を連れて行くのを見送るしかなかった。

秦野伸年は彼女の肩をもみながら言った。「もういいじゃないか。時枝さんがどれだけ忙しいか、分かるでしょう。修が言ったんだから、もう気にしないで」

時枝秋と藤原修が車に乗ってから、彼女は静かに言った。「おばあさまの状態はそれほど悪くないわ」

「何か方法があるのか?」藤原修は横を向いて彼女を見た。

今日は彼はあまり話さなかったが、機嫌が良いのは一目瞭然だった。

「まだ少し材料が必要ね」時枝秋は言った。次回は、おじいさまに鶏やアヒルや魚ではなく、植物を送ってもらう必要があるかもしれない。

彼女がそう言って、WeChat(微信)を見ると、藤原千華がまだメッセージを送ってきていた。「妹よ、お姉さんにチャンスをちょうだい」

たった一日で姉妹のように親しくなった藤原千華を見て、時枝秋は思わず笑みを漏らした。

……

龍崎雄は良い脚本を手に入れ、うきうきとセガエンターテインメントに時枝秋に見せに来た。