藤原修が立ち上がると、藤原千華は生き生きとした表情で時枝秋に何かを話しかけていた。時枝秋は淡々とした様子だったが、藤原千華に対してとても忍耐強く、彼女が何を言っても頷いていた。
「何を話してそんなに楽しそうなの?」秦野伸年が尋ね、二人にお茶を注いだ。
藤原千華が言った。「時枝さんにピアノを教えたいって説得してたの。あなたは知らないでしょうけど、彼女は先ほど入門曲を軽く弾いただけなのに、まるで巨匠のような風格があったのよ。彼女が学ぶ気になれば、きっと国際的な賞も取れると思うわ」
「千華は自分のように、いつもピアノのことばかり考えているとでも思ってるの?」秦野伸年は無奈気だが愛情を込めて言った。
「私が言ってるのは本当よ!」藤原千華は怒って言った。「信じられないなら、動画を見せてあげられるわよ!」