第360章 責任転嫁の達人

「まさか時枝秋の美貌を疑う人がいるなんて?」

これで、ようやく美貌についての話題は収まった。

アンチファンたちも収まり、他人にない欠点で攻撃するのは、非常に賢明ではない行為だった。

時枝秋は準備を整え、言った:「今日の配信では、私の最新曲『おとぎ話』を皆さんにお届けします。」

彼女はカメラから離れ、ピアノの前に座った。

皆は彼女のピアノを見た。美顔フィルターやエフェクトが一切ないため、ピアノはありのままの姿でカメラに映っていた。

真新しく傷一つない特徴も、皆の目に留まった。

すぐに熱心なファンは心配になった:「時枝秋のこのピアノ、ほぼ新品じゃない?普段本当に練習してないんじゃ?」

「大丈夫、少しでも弾ければいい」と自分を慰める人もいた。

「これは難しくない、時枝秋ならきっとできるはず」

これらの言葉は、誰も書き込まなかった。アンチファンに突っ込まれる隙を与えたくなかったからだ。

案の定、アンチファンはすでに始めていた。「ピアノがこんなに新しい?今日買ったんでしょ?」

「時枝秋も今日から始めたんじゃない?」

「実は弾けなくても構わない、ピアノが弾けない歌手はたくさんいる。でも弾けないのに無理して見せかけるのが、みんなが一番受け入れられないことなんだ」

ファンたちは強く反論できなかった。自分が恥をかくのは怖くないが、時枝秋が恥をかくのは耐えられなかった。

時枝秋はピアノの蓋を開け、目を上げて正面に座る藤原修を見つめた。

この曲は、作った時、彼が最初の聴衆だった。

配信の時も、当然彼が最初の、そして現場で唯一の聴衆となるべきだった。

時枝秋は指を鍵盤に置き、弾きながら歌い始めた:

「あなたは分からないかもしれない、愛してると言われてから、

私の空の星が輝き始めたことを、

おとぎ話の中で、あなたの愛する天使になりたい、

両手を広げ、翼となってあなたを守りたい、

信じて、私たちはおとぎ話のように、

幸せで楽しい結末を迎えると」

ピアノの音は滑らかで優しかった。

声は清らかで温かかった。

画面越しでも、暖かい風が心に染み入るようだった。

言うまでもなく、藤原修は彼女の正面に座っていた。

彼の眼差しは深く静かで、眉間には穏やかさと優しさがあった。

彼女の演奏を聴いたファンは、全員がプレーリードッグのように興奮した。