「バラエティー番組の撮影はドラマの撮影よりずっと楽だわ。あの人は頭がよすぎるから、きっと早くから楽な仕事に変えたかったんでしょうね」
責任転嫁の名人というレッテルが、黄瀬桂子に貼られた。
彼女は自分がこの話題性を利用できると思っていたが、結局その話題性に飲み込まれることになる。
以前の彼女がどれほど無実だったかと同じくらい、今は悲惨な状況に陥っている。
『私たちの生活』は葉山彩未を急遽黄瀬桂子に変更したことで、酷い批判を受けた。
葉山彩未は気さくな性格で、歌も上手く、第一回の放送で多くのファンを獲得していた。
番組のファンは彼女が黄瀬桂子に代替されたことを知り、制作陣を非難した:「頭も目もないのか、誰がバラエティーに向いているか分からないの?」
「はぁ、番組が早く終わることを祈るわ」
制作陣は世論の圧力に屈し、黄瀬桂子との契約は解除しなかったものの、批判を避けるため、彼女の宣伝写真やビデオなどの露出を減らした。
黄瀬桂子は既に契約、解約、再契約という経験をしており、制作陣と揉めることもできず、耐えるしかなかった。
彼女は今、この騒動が早く収まることだけを願っている。
もし彼女が更に騒ぎを起こせば、勝ち目は全くない。
幸いなことに、『三十歳』の出演を適切に辞退したことで、彼女のファンは特に感動し、彼女を必死に擁護している。
時枝秋のピアノ演奏シーンは、この一件で話題性が衰えるどころか、むしろ広く拡散された。
ファンは喜んで保存し、シェアしている。
時枝宝子と時枝雪穂もこの動画を見た。
時枝雪穂は少し心配そうに言った:「おばさま、みんな時枝秋の演奏が素晴らしいと言っていますが、どう思われますか?」
時枝宝子は数眼見た後に言った:「指使いは まあまあね。でもピアノは決してポップミュージックのために作られたものじゃないわ。時枝秋のやり方は俗っぽい。ファンを喜ばせるだけよ」
「彼女のクラシック演奏についてはどう思いますか?」
「クラシックは誰でも弾けるものじゃないわ。リストやショパンのような天才の作曲を、凡人が弾くのは冒涜よ」
時枝雪穂はようやく少し安心した。
彼女は動画を見た後、ずっと不安を抱えていた。自分のものが、また時枝秋に奪われることを恐れていたのだ。
時枝宝子がそう言うのを聞いて、安心した。