瀬尾先生はすぐに処方箋を書き上げ、藤原千華はそれを一瞥すると、いつものように執事に漢方薬局へ薬を取りに行かせようとした。
時枝秋は「お姉さん、見てもいいですか?」と尋ねた。
藤原千華は執事に渡すのを止め、代わりに時枝秋に渡して言った。「そうね、あなたも医術に詳しいって聞いたわ。見てみて」
時枝秋も医術を心得ているという話を聞いて、瀬尾先生は軽蔑するように笑った。
芸能界のタレントの設定も大胆になったものだ。歌って演じるという自分たちの領分に満足せず、医術まで語るとは。
時枝秋にはどうせ何も分からないだろうと思ったが、藤原修が傍にいて、その視線が常に時枝秋に注がれていたため、瀬尾先生も余計なことは言えなかった。
時枝秋は一目見て状況を理解し、言った。「瀬尾先生、この処方箋は飲んでも害はありませんが、おばあさまはご高齢で新陳代謝も遅いですから、これらの薬を代謝するのも体力を使います。飲まない方がいいのではないでしょうか」
瀬尾先生は先ほどまで何も言えなかったが、今や時枝秋に面と向かって批判されては、医者としての尊厳が保てない。
彼はすぐさま言った。「医学にお詳しいようですね。しかし、藤原おばあさまの病状は私が一手に治療してきたのです。医は仁術なりと言いますし、救うなら最後まで救うべきです。私はすでにおばあさまの体調をここまで回復させたのですから、残りわずかを放置するわけにはいきません」
藤原千華は笑って取り繕った。「瀬尾先生、誤解されているようです。時枝秋は本当に医術を持っているんです。以前、私の手の怪我も治療してくれました。きっと何か誤解があるのでしょう。時枝秋、あなたもはっきり説明して、どこが問題なのか、みんなで相談しましょう」
瀬尾先生は確かに藤原おばあさまを治療した医者だったので、藤原千華は当然丁重に接した。
「以前の処方箋を見せていただけますか?」と時枝秋は尋ねた。
執事はすぐにすべての処方箋を持ってきた。時枝秋が「ルイ十五」を贈って以来、彼女を見る目も一段と重みを増していた。
時枝秋はすべての処方箋を詳しく見て、首を振って言った。「すべて気血を補う処方ですね。飲んでも副作用はありませんが、先ほど申し上げた通り、おばあさまはご高齢で体調もよくないので、副作用はないけれど効果もないこれらの薬は、飲まない方がいいでしょう」