昨日の瀬尾先生のように、口では立派なことを言いながら、実際には人を死に追いやるだけだ。
これこそが彼が古代漢方医学を嫌う理由だった。
こういう連中は科学的な説明など何一つ示せず、薬も適当に処方し、精密さなど全くない。現代医学の安全性や合理性には到底及ばない。
「唐沢夫人、決めてください。今すぐ唐沢家の当主を静かな場所へお連れするか、それとも万田先生の治療を続けるか」時枝秋は万田先生とこれ以上言葉を費やしたくなかった。
彼女の立っている位置からは、唐沢家の当主の様子がよく見えた。
その顔色を見ただけで、時枝秋は病状についてある程度把握できていた。
唐沢夫人は万田先生を見て、また藤原千華を見て、最後に決心を固めて言った。「行きましょう!」
万田先生は怒り心頭だった。
唐沢夫人はいつもこんなに気まぐれで、以前も同じだった。どこかに良い治療法があると聞けば、すぐに連れて行ってしまう。
外で失敗するたびに、慌てて戻ってきては後始末を頼んでくる。
万田先生はとても気分が悪かった。
しかも唐沢家は権力と財力があり、病院に実験室と毎年の研究費を寄付しているため、万田先生も振り回されるしかなかった。
唐沢夫人が行くと言えばすぐに行く。唐沢家の当主は今は比較的安定していて、妻の言葉を聞くと反対せずにすぐに立ち上がった。
万田先生は本当に「今度出て行ったら、もう戻ってこないでください」と言いたかった。
時枝秋は前に出て唐沢家の当主を支え、その際に脈を取ると、状態は比較的良好だった。
彼女の心の中では既に投薬の方法が決まっていた。
唐沢家は大勢で来ていたので、すぐに荷物をまとめ終えた。
唐沢夫人は時枝秋に丁重に言った。「赤司先生、出発できます」
時枝秋は頷き、彼らと一緒に外へ出た。
患者が快適に座れるよう、唐沢夫人は今回キャンピングカーを用意していた。新鮮な空気を取り入れる換気システムがあり、患者の呼吸器系に良いとされていた。
キャンピングカーはとても大きく、十数人が乗れるほどだった。
時枝秋が乗り込むと、万田先生も後に続いて乗ってきた。
自分を見ているのに気付くと、万田先生は小声で言った。「来たくて来たと思っているのか?院長に付いて行けと言われなければ、絶対に来なかったよ」