この薬は、本来なら相応の実験や更なる研究が必要なはずだ。
時枝秋はどうやってそれを作り出したのだろう?
彼女の表情を見て、時枝秋は笑った。「私は薬の研究をしただけよ。他人の体を研究したわけじゃないわ。何を考えているの?」
藤原修は考えすぎていたことを時枝秋に指摘され、少し気まずそうに軽く咳払いをした。
時枝秋は彼の腕に手を回し、笑いながら言った。「薬を使うときに、あの人たちの体の構造を観察する必要があると思う?」
「ごほんごほん」藤原修は完全に質問をやめた。
時枝秋はさらに説明を加えた。「人体構造を研究するにしても、横澤博己なんかを使うわけないでしょう」
藤原修:「……」
二人が個室に入ると、萩原衡たちがすぐに出迎えた。「お姉さん、あっちで何か起こったって聞いたんですが、一体何があったんですか?」
「そうそう、何があったの?」荒木俊も興味深そうな顔をして言った。「さっき社長が電話で、男として機能しないとか言ってたけど、誰のことだろう?」
「横澤博己って名前を聞いたんだけど!」萩原衡が尋ねた。「あの横澤博己って、前にツイッターでお姉さんのことを当てこすってた人じゃない?」
話がここまで来たので、時枝秋は簡単に事情を説明した。
説明する前に、青木空も熱心に聞いているのに気づき、彼女は手で青木空の耳を塞いだ。
青木空は飛び上がりそうになるほど焦った。
時枝秋が説明を終えると、その場にいた男性たち全員が背筋が寒くなる思いをした。
萩原衡は二歩後ずさり、両手で股間を押さえながら言った。「お姉さん、僕は何でも言うことを聞くから、そんな薬は使わないでくださいよ」
荒木俊も手を挙げて降参した。「私を実験台にしないでください」
本間拓海は黙って自分のグラスを後ろに下げ、時枝秋から少し距離を置いた。
時枝秋は思わず笑った。青木空は多少話を聞いていたようで、時枝秋に近寄って「お姉さん、教えて!」と言った。
時枝秋は指で彼女の額を軽くつついた。「まずは勉強。大学に入ってからね」
「じゃあ、大学に入ったら絶対教えてくれるんだよ」青木空は嬉しそうだった。
萩原衡たちはそれを聞いて魂が飛び出しそうになり、手を振って「次は集まらない、集まらない」と言った。
本間拓海は「横澤博己のような人間は、当然の報いだ」と言った。