第375章 共に進退を共にする意味

ショパンピアノコンクールの二次予選に参加することは、外部には知られていなかった。

そのため、見送りのファンは一人もいなかった。

木村裕貴と陸田は荷物を押しながら時枝秋の後ろについて行き、そのままVIPエリアで休憩することになった。

「30分後に搭乗できます」と木村裕貴は時枝秋に静かに伝えた。

「はい」

これが時枝秋と初めて一緒に飛行機に乗る機会だと思い出し、それまでの活動はすべて定戸市で行われていたため、木村裕貴はバッグの中身をもう一度確認した——酔い止め薬、耳栓、水筒に入った菊花とクコの実のお茶、アイマスク。

どんな突発的な状況にも対応できることを確認してから、木村裕貴はようやくジッパーを閉めた。

隣に座っていた陸田は小声で言った。「木村さん、最近ますます細かいところまで気を配るようになりましたね。以前トップアーティストを担当していた時でもこんなに気を使っているのを見たことがありませんでした」

木村裕貴は彼を一瞥した。

陸田に指摘されて、自分がますます世話係やアシスタントのようになっていることに気づいた。

でも、時枝秋の世話係やアシスタントを務めるのも、悪くない。

外の一般席待合室では、時枝雪穂も同じ便を待っていた。

彼女の傍らにいたのは浜家秀実と横澤蕾だった。

浜家秀実は荷物を持ちながら、横澤蕾に言った。「蕾さん、今回は雪穂に付き添っていただいて、本当にありがとうございます」

「当然のことです」と横澤蕾は言った。「もうすぐ雪穂と契約を結ぶことになりますし、今回はお互いの仕事のスタイルに慣れる良い機会でもあります」

「ああ、これからは雪穂をよろしくお願いしますね」と浜家秀実は嬉しそうに言った。

「それは私の仕事ですから。今回雪穂が全国大会で4位を取れたことは、小林凌も私も本当に嬉しく思っています。今回のショパンコンクールの二次予選の見学も、雪穂の見識を広げる良い機会です。これでファンの皆さんにもっと雪穂のことを知ってもらえるでしょう」と横澤蕾は言った。

浜家秀実は心の中で特に喜んでいた。「4位を取れたのは本当に大変なことでしたね。そうそう、今回の二次予選の見学では、ライブ配信をする予定ですか?」

「はい、雪穂の契約に向けての事前宣伝として」と横澤蕾は答えた。

傍らに立っていた時枝雪穂は、心の中で興奮を抑えきれなかった。