第408章 髪の毛一本一本が後悔している

ここは定戸市の二環内の場所で、ほとんどが重要機関や企業の所在地であり、居住区はすでに非常に少なく、昔からある四合院しかない。

それ以外に、この土地の価値が高い場所では、空き地は一切見つからない。

「周防さん、こちらへどうぞ」時枝秋は彼を連れて路地を通り抜け、ある四合院の門前で立ち止まった。

彼女は手を伸ばして門をノックした。

中から質素な老夫婦が門を開け、彼女を見ると、恭しく「時枝さん」と呼びかけた。

「おじさん、おばさん、こちらは周防さんです。私の花を見に来てくれました」と時枝秋は紹介した。

「わかりました、周防さん、どうぞお入りください」おじさんは彼を迎え入れた。

周防治樹は四合院に行ったことがないわけではない。

しかし、定戸市でこれほど広々とした四合院を見るのは初めてだった。青い煉瓦と赤い瓦の四合院は、面積が広く、中にはさまざまな珍しい花や植物が植えられており、香りが鼻をくすぐった。

「なるほど」彼は先ほど外に立っていた時、すでに変わった香りを嗅ぎ取っていた。清々しく、心地よい香りだった。

彼は思わず小道に沿って奥へと進み、さらに遠くを見ると、まだ果てしなく続いているように感じた。そこで彼は気づいた。これは一つの四合院ではなく、いくつかの四合院が繋がっているのだと。

一つの四合院の面積だけでもかなり広いのに、いくつかが繋がると、さらに壮観だ。

定戸市では、五環内には新しい住宅を建てる場所がどこにもなく、このような四合院は実に貴重だった。

お金があっても買えないものだ。

おじさんがお茶を持ってきた。「周防さん、どうぞお茶を」

周防治樹は茶碗を手に取り、一口すすった。茶葉の清らかな香りと、言葉では表せない美味しさと心地よさがあった。彼が見下ろすと、中には薄いピンク色の花びらが浮かんでいた。

これはおそらく時枝秋が自ら作ったものだと察した。

「周防さん、私はここにもう少し別の花を植えたいと思っていますが、必要な土壌について、あなたの助けが必要です」

「何でも言ってください」

「必要な土壌はかなり多く、また複雑です。詳細なリストを作りましたので、準備をお願いできますか」

周防治樹はリストを受け取り、そこに記載された各項目のデータを見て、面倒だとは思わず、むしろこのような仕事をすることは一種の楽しみだと感じた。