時枝秋が彼女の前に歩み寄った時、陸田円香は資料を見ながら頭を下げていて、とても苦々しい表情をしていた。
時枝秋はカバンを机の上に置いた。
「すみません、ここには人が座っていますよ」と円香は何気なく言った。
さっき時枝秋が入り口にいた時、彼女がこの言葉を何度も言うのを聞いていた。
彼女は軽く机を叩いた。「私のために取っておいてくれたんじゃないの?」
円香はすぐに顔を上げ、笑顔を見せた。「時枝秋、来たんだね?」
「うん」時枝秋は座った。
円香は特に何も言わなかったが、彼女がとても嬉しそうなのは見て取れた。
彼女は本を持ち上げて見せた。「見て、前に教えてもらった薬材、今はすっかり理解して、全部見分けられるようになったよ。でも…」
「ん?」時枝秋は彼女を見つめた。
「でも、今は全然役に立たないんだ。この期間の授業は全部基礎科目、基礎科目、基礎科目、しかも全部理論ばかり」