時枝秋が彼女の前に歩み寄った時、陸田円香は資料を見ながら頭を下げていて、とても苦々しい表情をしていた。
時枝秋はカバンを机の上に置いた。
「すみません、ここには人が座っていますよ」と円香は何気なく言った。
さっき時枝秋が入り口にいた時、彼女がこの言葉を何度も言うのを聞いていた。
彼女は軽く机を叩いた。「私のために取っておいてくれたんじゃないの?」
円香はすぐに顔を上げ、笑顔を見せた。「時枝秋、来たんだね?」
「うん」時枝秋は座った。
円香は特に何も言わなかったが、彼女がとても嬉しそうなのは見て取れた。
彼女は本を持ち上げて見せた。「見て、前に教えてもらった薬材、今はすっかり理解して、全部見分けられるようになったよ。でも…」
「ん?」時枝秋は彼女を見つめた。
「でも、今は全然役に立たないんだ。この期間の授業は全部基礎科目、基礎科目、基礎科目、しかも全部理論ばかり」
前の席の女子が振り返って言った。「基礎をしっかり固めるのが一番大事よ。基礎科目を受けたくないなら、研究クラスに行くしかないわ。でも研究クラスは、普通の人が行けるようなところじゃないわ」
「研究クラスって何?」と円香は尋ねた。
前の女子は詳しく説明した。「研究クラスは各学年各クラスの優等生が、学部長や副学部長について学び、直接手を動かして様々な薬材を研究できるの。実習の機会も得られて、実際に患者さんと向き合えるわ。私たちのような基礎科目と比べると、学べることがずっと多いの。でも通常は3年生や4年生になってから研究クラスに入る機会が増えるわ。1年生でも入れる人はたまにいるけど、例が少なすぎるわ。やっぱり基礎が足りないからね」
「どうやって入るの?申請するの?」と円香は好奇心を持って尋ねた。
「毎学期試験があって、特に優秀な人が入れるわ。普通の人は諦めて、基礎科目をきちんと学んだ方がいいわよ」
円香は祖父について学んできた実践派だったが、基礎理論の面では非常に弱かった。
特に優秀な人だけが研究クラスに行けると聞いて、すぐに気力を失った。
彼女の理論知識は、研究クラスに行くほど優秀ではなかった。
時枝秋は彼女を一瞥して言った。「WeChat持ってる?」