藤原修は彼女が季山監督と食事の約束をしていて、自分で育てた花を持っていったことを覚えていた。
それは何も意味するものではなく、彼女の通常の社交や仕事の一環に過ぎなかった。
時枝秋は目に笑みを浮かべて言った。「検査に来てもいい?」
「じゃあ、検査結果はどうだった?」藤原修は協力的に立ち上がり、両手を広げた。
「まあまあかな」時枝秋は前に進み、彼の側に来た。
彼女は十分に背が高かったが、それでも彼の前に立つと、見上げなければ目を合わせることができなかった。
彼女は彼の深い瞳を見つめ、「ご褒美をあげる価値があるわ」と言った。
「じゃあ...何をくれるの?」藤原修は広げていた両手を彼女の腰に置いた。その細さを感じると、心臓の鼓動が一瞬止まり、その後倍の速さで打ち始めた。
いつでも、何度でも。
彼女さえいれば、彼はこのような反応を示すのだった。
時枝秋はつま先立ちになり、ゆっくりと彼に近づいた。
彼女の息は蘭のように香り、その目は魅力的に輝いていた。
藤原修は動かず、期待を込めて彼女を見つめ、彼女の積極性を楽しんでいた。
時枝秋の赤い唇が近づいてきたとき、彼ののどぼとけが軽く動き、次の瞬間、彼女が触れそうになった。
そして、彼の唇に冷たい息が感じられ、時枝秋は親指ほどの大きさのガラス瓶を彼の唇に当てた。
掻き立てられた情熱は彼女によって一瞬で打ち砕かれた。
彼は手を伸ばし、ガラス瓶と彼女の指を一緒に掌に収め、強引にキスを求めて、先ほどの不満を埋め合わせた。
「これは何?」
キスが終わると、彼は彼女を放し、彼女の指先からガラス管を見た。
「この植物はアイスノーと言うの。私が特別に育てて、ここに入れたの。あなたはいつでも持ち歩けるわ。あげる」
すべての微妙な感情は、彼女によって和らげられた。
彼のすべての思いも、彼女に見られ、彼女に気にかけられ、彼女に慰められた。
藤原修は再び彼女の頭を抑え、キスで彼女を封じ込めた。
時枝秋が去ったのは午後だった。
彼女が去った後、藤原修は彼女からもらったものを机の上に置いた。
先ほど、時枝秋はこの半密閉式のガラス管に入れた植物に水をやる方法や育て方を説明していた。
しかし、その時、藤原修は一言も聞いていなかった。