彼女がこれほど丁寧に世話をしていたのは、他の人にあげるためだったのだ。
「実はあの種は完全なものではなくて、私もただ試してみただけで、まさか本当に生き残るとは思わなかったの。明日、季山監督と会うから、彼にあげられるわ」
藤原修は指を伸ばし、若芽に触れようとした瞬間、指が微かに硬直し、すぐに自分の手を引き戻し、この鉢植えの若芽を潰してしまいたいという衝動を抑えた。
彼の動きは抑制されながらも自制が難しく、手の甲に青筋が浮かんでいた。
彼の様子は時枝秋の視線に捉えられていた。
時枝秋は思わず彼を見つめた。彼は目を伏せ、瞳の奥の本当の感情を隠した。
彼女は彼の手の甲に自分の手を置いた。「若芽に触れてみたい?」
藤原修は何も言わなかった。
時枝秋は彼の指を導き、その若芽に優しく触れさせた。