第412章 超高速の録音スピード

彼女がこれほど丁寧に世話をしていたのは、他の人にあげるためだったのだ。

「実はあの種は完全なものではなくて、私もただ試してみただけで、まさか本当に生き残るとは思わなかったの。明日、季山監督と会うから、彼にあげられるわ」

藤原修は指を伸ばし、若芽に触れようとした瞬間、指が微かに硬直し、すぐに自分の手を引き戻し、この鉢植えの若芽を潰してしまいたいという衝動を抑えた。

彼の動きは抑制されながらも自制が難しく、手の甲に青筋が浮かんでいた。

彼の様子は時枝秋の視線に捉えられていた。

時枝秋は思わず彼を見つめた。彼は目を伏せ、瞳の奥の本当の感情を隠した。

彼女は彼の手の甲に自分の手を置いた。「若芽に触れてみたい?」

藤原修は何も言わなかった。

時枝秋は彼の指を導き、その若芽に優しく触れさせた。

指先から柔らかな感触が伝わり、藤原修の抑制された感情がようやく少し緩んだ。

「季山監督は先輩であり、年長者でもあるわ。私がこの花を彼に育てたのは、ほんの些細なことで、他意はないのよ」時枝秋は藤原修が何を考えているかほぼ分かっていた。

だから彼女は惜しみなく自分の本当の考えを一つ一つ口にした。

周囲の気圧も正常に戻り、先ほどのような低く暗いものではなくなった。

彼女は唇の端を上げ、微笑んだ。「私が育てている他の花も見てみる?」

「ああ」藤原修の声は穏やかになっていた。

しかし、感情は一時的に落ち着いたものの、彼の心の奥底はまだ完全には静まっていなかった。

夜になると時枝秋を激しく求め、特に激しく彼女を翻弄した。

翌日。

木村裕貴が時枝秋に付き添い、季山勝洋との約束の場所へ向かった。

このレコーディングスタジオは季山勝洋が指定した場所で、彼のほぼすべての作品のレコーディングがここで行われていた。

「季山監督」時枝秋は彼を見て挨拶した。

季山勝洋は穏やかな笑顔を浮かべた。「レコーディングスタジオは準備ができているよ。見てみて、まず慣れておいて、食事の後に戻ってきて録音しよう」

時枝秋は中に入って見学した。さすが季山監督御用達のレコーディングスタジオ、彼女が歌を録音するスタジオよりも設備が良かった。

彼女はしばらく見た後、尋ねた。「季山監督はさっきここで練習されていたんですか?」