第493章 手が滑って起きた事故

「いいわ、あなたは最初から故意にやったわけじゃないんだから、誰に聞かれても、手が滑って起きた事故だと言い張ればいいの。彼女がこんな怪我をしたんだから、警察は当然調査するわ」

彼女は向井社長が重岡恒星にトラブルを起こすことを心配していた。

しかし、撮影中の手滑りであれば、重岡恒星には何の責任もない。

重岡恒星がいなければ、この薬品は自分の顔にかかっていたはずだ。

監督も恐ろしさを感じ、前に出て時枝秋の状態を確認し、彼女の肌が全く傷ついていないのを見て、やっと安心した。

彼は時枝秋に約束した。「時枝秋、安心して。必ず彼らと協力して事件の真相を解明するよ」

小道具チームのメンバーはすでに全員震えていた。彼らが用意した小道具に問題があったのだから、皆の心に恐怖が湧き上がった。

自分たちがどれだけ巻き込まれるのか、向井社長がトラブルを起こすかどうかもわからない。

病院からの情報はすぐに戻ってきた。「小道具の薬品には、高い割合の化学物質が含まれており、皮膚に対する腐食性が非常に強い」

小道具チームはさらに呆然とした。「私たちは本当にやっていません!」

「誓います!」

「時枝秋、私たちじゃないんです!」

彼らは時枝秋が彼らに対して悪い印象を持つことを恐れていた。

「あなたたちがやったかどうかは、警察が公正に判断してくれるでしょう。やっていないなら、自分の仕事に集中すればいいわ」時枝秋は冷静に言った。

彼女の言葉で小道具チームのメンバーはかなり安心した。そうだ、警察はこういう人を見逃さないだろう。皆が心配するよりも、自分の仕事に集中した方がいい。

他の人たちは小声で噂し始めた。「時枝雪穂の左側の顔が腐食されて、醜くなったらしいよ」

「重岡恒星がやったんじゃない?彼ら二人は昔から確執があるし」

「わからないね...」

重岡恒星は当然、連れて行かれて調査に協力することになった。

時枝秋は木村裕貴に指示し、弁護士とボディガードを連れて行き、重岡恒星に付き添わせた。

今日の撮影は当然できなくなった。時枝雪穂が顔を損傷したと聞いて、現実的なプロデューサーはすぐに人を病院に見舞いに行かせ、一方で時枝雪穂のシーンをさらに削減した。

二人のヒロインの物語は、今や完全に一人のヒロインの物語になった。