第518章 欲しいものと好きな姿

「私があなたを手伝うことで、私の仕事に影響が出たり、藤原修との関係にまで影響が出たりしないかしら？」

「あなたを手伝う前に、そういったことはすでに考えていたわ」時枝秋のコーヒーが給仕によって運ばれ、目の前に置かれた。

彼女はスプーンでそっとかき混ぜながら言った。「私たちは穏やかな生活を送りたいと思っていたけど、染宮家が同意しないなら、続けるしかないわね」

コーヒーはかき混ぜられるにつれて茶色の渦を作り出し、時枝秋の手が徐々にゆっくりになると、その渦も次第に収まっていった。

堀口正章は言った。「わかった。今回のショーは絶対に諦めない。でも後半は海外に行くことになるから、本当に君に負担をかけることになる」

「ちょうど海外に遊びに行きたいと思っていたところよ、この機会にぴったりね」時枝秋は笑いながらコーヒーを一口飲んだ。

堀口正章の憂鬱は一掃された。「いいね、その時は色々なところに連れて行ってあげるよ。君がまだ行ったことのない場所がたくさんあるはずだ」

時枝秋はうなずいた。「いいわね、でもあなたのおごりよ」

「任せておけ！」

時枝秋は前世で染宮家が海外で発生したある種の細菌感染をいち早く研究してワクチンを開発し、大儲けして堀口景介を完全に押さえ込んだことを思い出した。

今回、彼女が海外に行けば、一歩先んじてそれを確認することができ、一石二鳥だ。

しかし、海外に行くことについては、やはり藤原修とよく相談しなければならない。

「出かけるって、どれくらいの期間だ？」藤原修の表情は厳しく、眉目の間に暗い影が覆いかぶさっていた。

「二番目のお兄さんと一緒だから、そんなに長くはないわ」

藤原修の薄い唇がわずかに引き締まった。

時枝秋はこれが彼の拒絶の表れだと知っていた。

彼女は静かに言った。「染宮家のことは知ってる？」

「知っている」藤原修は尾張家に手を出した者たちのことを、常に明確に覚えていた。

小さな家族は、すでに彼の手で処理されていた。

しかし染宮家の背後にはS国の総理官邸の人間がいたため、藤原修は当時、彼らの重要なリソースを断ち切ったものの、彼らを完全に打撃を与えることはしなかった。

これらのことを彼は時枝秋に話したことはなかった。

しかし実際、時枝秋との日常の付き合いの中で、彼女が彼のやり方を知っていることを彼は理解していた。