時枝秋は前世を思い出した。なるほど、染宮家が尾張家をずっと抑圧していたのも納得だ。前世では堀口景介の聴力が失われ、尾張靖浩の両足が動かなくなり、尾張お爺さんも過労で亡くなったため、尾張家には戦う力が全くなかった。
当時の堀口正章も、きっと染宮琴音の離別によって創作意欲に大きな打撃を受け、家庭の問題に追われて実力を発揮できず、最終的には天才デザイナーとしての輝きを失い、流れ星のように消えていった。
前世では、藤原修が尾張家を多方面から支援していたが、彼らの病気や怪我は藤原修本人でも変えられないことだった。そのため、尾張家は徐々に衰退していった。
その後の時枝秋も庇護を失い、多くの人々の抑圧と嘲笑の対象となった。
ここまで考えると、時枝秋の目に熱いものがこみ上げ、指をきつく握りしめた。