「橋本幸と斎藤玲は彼らの会社での発展が限られているから、私は彼女たち二人を我が社に引き抜きたいと思っている」
龍崎副監督は、これが時枝秋がショーに参加することを承諾する条件だと理解した。
この要求は、時枝秋の現在の地位を考えれば、確かに過剰なものではない。
「わかった、話をつけてみよう」
木村裕貴は電話を切った。
この件は時枝秋から依頼されたもので、この二人の若い女の子を獲得したいということだった。
木村裕貴はいつも感じていた。時枝秋の女の子たちへの寛容さと保護の意識は非常に高い。おそらく彼女自身が女性だからこそ、この業界で女性が頭角を現すことがより難しいことを知っているのだろう。
木村裕貴が自ら樂頌エンタメに接触しなかったのは、彼らに「どうしても二人が必要だ」と思わせたくなかったからで、彼らが値段を吊り上げるのを避けるためだった。
龍崎副監督が仲介することで、多くの事がより便利になり、余計な絡みも少なくなる。
案の定、すぐに龍崎副監督から返事があった。「この件は少し難しいですが、我々の番組は時枝秋さんを本当に大切にしていますので、全力を尽くしてこの件を解決しました。時枝秋さんの契約が締結されれば、橋本幸さんと斎藤玲さんの契約書も用意できます」
木村裕貴は彼がまだ一手を残していることを見抜いた。兎を見なければ鷹を放たないというわけだ。
実際、樂頌エンタメにとって、橋本幸と斎藤玲を抱えておくことはあまり意味がない。彼らの手元には似たような女性タレントがまだたくさんいて、いつでも同様の人材を出せるのだ。
龍崎副監督が相手を説得するのは、実際それほど難しくないはずだ。
……
時枝秋がさらに数回撮影することになったと聞いて、番組のほぼすべてのタレントたちは喜んだ。
以前は皆が水野羽衣と久保田天音の引き立て役だった。番組効果は彼ら二人には役立ったかもしれないが、他の人たちにはあまり効果がなかった。
しかし時枝秋がいると違ってくる。これは本当に面白い競技番組になったのだ。
時枝秋はすぐに契約を結び、さらに三回の撮影を続けることになった。
……
同時に、定戸市大学医学実験室では。
堀口景介の新しいワクチンの研究が成功し、現在最終的な人体実験が行われている。
問題がなければ、すぐに納品できる。