第33章:婚約破棄

数秒後、WeChat(微信)グループで誰かが返信した。

「結婚は中止になったわ」と熊谷玲子が答えた。

その言葉が出るや否や、数人のクラスメートが口々に尋ねた。「どういうことなの?」

「そうよ、家も買ったって聞いてたのに、どうして中止になったの?」

「合わなかっただけよ。そんなに理由を詮索することないでしょ。お祝い金も節約できたじゃない。そうそう、みんな岑のために良い独身男性を探してあげてね」と熊谷玲子は冗談めかして返した。

そのとき、関口東がオンラインになり、「本当?冗談でしょ」と書き込んだ。

「もちろん本当よ。こんな大事なことで冗談言うわけないでしょ」と熊谷玲子は白目を向けた。

「最高だ!美人様が独身になった。チャンスだ」と関口東は冗談なのか本気なのか分からない一言を投稿した。

そのとき、大石紗枝という女子クラスメートが意地悪そうに返信した。「そうね、美人様が独身になったわ。追いかけるなら早くしないと。今度は失敗しないでよ、お金持ち」

西尾聡雄はチャット画面をただ静かに見つめていたが、一言も発しなかった……

なぜなら、このグループの数十人の中で、青木岑以外の誰にも興味がなかったからだ。

思えば前回の同窓会も片山先生のおかげだった。彼が片山先生をニュージーランドから連れ戻さなければ、青木岑は絶対に同窓会に来なかっただろう。彼女の性格をよく知っていたからだ。

みんながあれこれと話している最中、突然青木岑がオンラインになった。

「申し訳ありません。結婚式にみなさんを招待できなくなりました。確かに結婚式は中止になりました」

「美人様、気にしないで。あいつに目がなかっただけよ。運がなかっただけ。独身万歳!」

「青木美人様、チャンスをください!」と関口東が冗談めかして言った。

「岑、仕事中じゃなかったの?今日暇なの?WeChatできるなんて」と熊谷玲子が尋ねた。

「うん、手術の補助を終えたところで、看護師長が一日休暇をくれたの」

「へぇ、あの鬼ばばぁも今回は良い判断したわね。じゃあ、今夜食事でも行かない?私、時間あるわ」

「私も行きます!私が払います。場所はお任せします」と関口東が割り込んできた。

「ごめんなさい、また今度にして。玲子、私はこれから第四病院に母の様子を見に行かなきゃ」