青木岑はしばらく躊躇してから頷き、この件は院長には隠せないと分かっていた。
「はい、以前から知り合いです」と彼女は重要な部分を避けて軽く答えた。
「それは良かった。友人なら、西尾博士に弟さんの手術を依頼することをお勧めします。ご存知の通り、彼はハーバード大学の医学博士で、脳外科の権威ある専門家です。前回の要人の手術でその腕前をご覧になったはずです。彼が執刀医を引き受けてくれて、当院の執刀医が補助に入れば、弟さんの成功率はさらに上がるでしょう。どう思われますか?」
「はい、考えさせていただきます。ご助言ありがとうございます」
そう言って、青木岑は院長室を出た...心中は複雑な思いで一杯だった。
西尾聡雄に頼みに行くなんて?それは彼女にとって死ぬより辛いことだった。まずはお金を集めることにしよう。二百万円は決して小さな額ではないのだから。
病室にて
青木岑が入室したとき、母はすでに目を覚ましていたが、まだ落ち込んでいる様子だった。
「お母さん、相談があります」と青木岑は静かに切り出した。
永田美世子は顔を背け、蒼白い顔で応答しなかった。
「今、院長室に行って幸治の状態について相談してきました。院長も幸治に二度目の手術を勧めていますが、手術費用が高額で、二百万円かかります」
「家も土地も売ってでも幸治を助けなければならない。お金なんて何でもないわ」と永田美世子は青木岑を睨みつけて言った。
青木岑は頷いた。「私もそう思います。幸治を救うためなら、どんな代償も払います。お母さんは体を大切にしてください。残りのことは私に任せてください。まずはお金を集めに行きます」
「家を売ればいい。私たちは借家に住めばいい」と永田美世子は俯いて呟いた。
「今から家を売っても間に合いません。数日以内に二度目の手術があるので、私が方法を考えます。ゆっくり休んでください」
そう言って、青木岑は病室を出た...
彼女は深く息を吐き、冷静になろうと努めた。そして携帯を取り出し、電話帳を開いて一つ一つ確認した。この重要な時期に助けてくれる人がいないか探した。
そのとき、ある人物が思い浮かんだ——寺田徹だ。
寺田徹にお金を借りようというわけではなく、ただ家を買ったとき、青木岑自身も百十二万円を手術費用として出していた。