第40章:あの頃

青木岑は一人で市本部の入り口に立ち、風に吹かれながら途方に暮れていた。保釈に来たはずなのに、一体どういうことなのだろう?

青木岑がタクシーで帰るのは高すぎるから、バスで第一病院に直接行くべきか迷っているところで。

アウディR8が不思議なことに戻ってきた。たった5分後のことだった。

「乗れ」

「こんなに早く?彼はどこ?」

「前のホテルにいる」西尾聡雄が答えた。

青木岑は言葉を失った……西尾聡雄の仕事の効率は本当に……

「早く乗れよ」

青木岑はもう躊躇わず、ドアを開けて助手席に座った。

長い沈黙の後、彼女はゆっくりと口を開いた。「今日のこと、あなたが仕組んだの?」

西尾聡雄はハンドルを握る手が一瞬止まり、横目で彼女を見た。「俺が彼を陥れたと疑ってるのか?」

青木岑は黙ったまま……