第53章:助けて

「どうしたの?私がお金を受け取って約束を守らないと思ったの?そんなことはしないわ。約束したことは必ず守るから」青木岑は焦って説明した。

「いや、それじゃないんだ。私の方の問題で...とにかく、申し訳ない。もう顔向けできないよ」関口東は青木岑の言葉を遮って、慌てて電話を切った。

青木岑にとって、天が崩れ落ちたようだった。やっとの思いで集めた二百万円が、一瞬にして水の泡となってしまった。

本当に泣きたかった...

でも、幸治がVIP手術室で待っている。

最後に、メディアに頼むしかないと考えた。たとえ皆に笑われても、今は幸治の命を救うことが先決だ。

携帯を手に取ってメディアの連絡先を探そうとした時、病院からの電話が入った。

「先輩、すぐに来てください。弟さんの容態が良くありません」

「分かった、今すぐ行きます」

30分後、第一病院VIP病室の外で

「このような症状は珍しいケースです。しかし、これ以上待てない状況です。すぐに手術を行うことを提案しますが、成功の保証はありません。青木さん、院長から聞いたところ、前回の特別招聘教授の西尾博士とお知り合いだそうですね。であれば、西尾博士に手術を依頼することをお勧めします。後遺症が残るようなことがあっては困りますからね。人命に関わることです。どうお考えですか?」

「考えさせてください」

「考える時間はありません。患者さんは二次性脳出血を起こしています。このまま放置すれば脳死の可能性があります」

「分かりました。少し待ってください。すぐに行きます」

最後には、幸治への愛情がすべての理性に勝った。たとえ西尾聡雄に嘲笑われても、困らせることになっても。

試してみるしかない...最愛の弟のために。

西尾グループ本社

「社長、青木という名前の女性がお会いしたいと仰っています」受付から電話が入った。

「通してください」西尾聡雄は考えた。青木岑以外に青木姓の女性は知らない。

5分後

オフィスのドアをノックする音が聞こえた。

「どうぞ」

青木岑がドアを開けて入ってきた。西尾聡雄は床から天井までの窓の前に立っており、振り向いた瞬間、その眼差しには限りない優しさが溢れていた。

そんな眼差しは、青木岑にしか向けられないものだった。

「来たんだね」

「急用があって来ました」

「話を聞こう」